出版社内容情報
【文学/日本文学小説】妻を亡くしたひとり暮らしの81歳の男、ずっと独身を通してきた46歳の女性ケアマネジャー、老人介護の仕事をやめたばかりの27歳の僕……。ぬぐえない痛みを抱えた大人たちの間で、風変わりな恋がはじまる──。解説・角田光代。
内容説明
27歳のヘルパーの草介と、彼に淡い恋心を抱く46歳の女性ケアマネの重光さん、そして彼女に不思議な欲望を覚える81歳の吉崎老人。それぞれの秘密が静かな日々の中でふと泡立ち、奇妙な恋が動き出す。彼らの心の痛みに寄り添ってくれる空也上人とは?
著者等紹介
山田太一[ヤマダタイチ]
1934年浅草生まれ。脚本家、作家。早稲田大学教育学部卒業。58年松竹大船撮影所に入社し、助監督として木下恵介に師事。65年に同社退社後、シナリオライターとして独立し、主としてテレビドラマの脚本を執筆。77年「岸辺のアルバム」で脚本家としての地位を確立し、その後「ふぞろいの林檎たち」「日本の面影」など話題作を手掛ける。83年向田邦子賞、85年菊池寛賞受賞。小説家としては、2004年『異人たちとの夏』で山本周五郎賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
モリー
38
一気に読み通した。自己嫌悪や弱さを抱えながら人は生きている。私もそうだ。だからこそ、空也上人のように寄り添ってくれるこの小説に惹かれたのだと思う。2019/03/21
ひさか
22
2011年4月朝日新聞出版刊。書下ろし。2014年8月朝日文庫化。山田さんらしい、想いと恋の話。綺麗な話にまとまっていて、楽しめました。2021/08/29
遅筆堂
22
すごい、ビビった。脚本家の書く小説だな。最低限の文字でその空気まで表現する力は凄い。山田太一の昔のシナリオは随分と読んでいて大好きな方であるが、この小説はほんとうに凄い。老いるということは、こういうことなんだなとリアルに感じる。なるべく早い内に六波羅蜜寺に行きたい。因みに、今、空也上人像のペーパークラフトを作っているところ。2014/05/24
colocolokenta
16
登場人物は三人。これでも物語というものは成立するのだから、不思議だ。というよりは、人はせいぜいこのぐらいの人数としか深く関わることはできないのだろう。それも、それぞれの人のごく一部。短いかかわりと小さな事件で話は終わる。山田太一の小説は初めて読んだが、味わい深く、楽しく読むことができた。そのうち、映画かドラマになるだろうが、その時の配役が今から楽しみ。吉崎さんにはあの俳優、重光さんにはあの女優、草介くんにはこの俳優、と思うところがあるのだか、まあだいたいは裏切られるので期待しないで待っていようと思う。2014/11/07
ソングライン
15
81才の一人暮らしの吉崎さんの自宅介護を46才のケア・マネジャー重光さんから頼まれる27歳の介護士中津草介。京都へ行き空也上人像の前に立て、重光さんと結婚すれば私の財産をすべて二人に譲る、吉崎さんの奇妙な提案に困惑する草介。3人に芽生えた純粋で奇跡のように苦しい恋心は、どこにたどり着いたのか。ふたりでいられれば、それでいいんだ、草介が掴んだ幸せを、空也上人がとなりで見守っています。心洗われる小品に感動です。2021/04/25