内容説明
浅草・初音座で一、二の人気を争う名女形・嵐采女が宙乗り最中、何者かに命綱を切られて殺されてしまう。若女形の嵐夢之丞は、代役として舞台に立ちながら、事件の真相を探っていく…。絢爛たる元禄の江戸で巻き起こる、栗本捕物帖。
著者等紹介
栗本薫[クリモトカオル]
別名に中島梓。1953年、東京都生まれ。1977年、中島名義の「文学の輪郭」で群像新人文学賞評論部門受賞。1978年、『ぼくらの時代』で江戸川乱歩賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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たか
51
江戸中期、元禄を舞台に、秘められた過去を持つ女形役者、嵐夢之丞を主役に配した捕物帳。捕物帖の王道を行く一冊。 浅草・初音座で一、二の人気を争う名女形・嵐采女が宙乗り最中、何者かに命綱を切られて殺されてしまう。若女形の嵐夢之丞は、代役として舞台に立ちながら、事件の真相を探っていく…。 前半緩やかなテンポから、後半は一気に急展開!最後に収録されている八篇目で全てが解決するかと思いきや、続篇の『地獄島』に続く。C評価2020/09/13
藤月はな(灯れ松明の火)
43
腕も頭も演技も機転も上等だが外面菩薩、内面夜叉であり、過去を頑なに秘している嵐夢之丞。彼には時には陰惨な人の業や切ない事件がなぜか艶やかに付き纏う。元、掏摸の仙吉が夢様の舞台を観るためならば働いているという気概にキュンときて女嫌いの秋月主殿が夢様を口説いているのにドキドキします。そしてまさかの幕引き。これは「地獄島」も読むしかありません。女としての業と遣る瀬無さとエゴを描いた「お小夜時雨」が心に残っています。2013/05/19
紫鈴
17
まず、色っぽいのにちゃんと男性だと判る表紙の絵師さんの技量に脱帽。氷のように美しく、武芸者のような身のこなし、それでいて周りの人を放っておけない優しい夢様に魅了されました。歌舞伎調なのか文体にクセはあるものの、話に引き込まれました。短編集の「十二ヶ月」を読んだことがあったので、夢様がたくさん読めて楽しかったです。☆42015/10/07
深青
16
美しく艶やかなのに、どこか影のある女形「夢之丞」を主人公にした時代小説の短編集。この夢之丞、最初に女形と紹介がなければ、女性だと見間違い(読み間違い?)そうです。江戸の町を舞台にそれぞれの短編で事件が起き、夢之丞が解決するのですが、一番謎に包まれているのは、夢之丞本人なのです。最後まで夢之丞の背景がはっきりと明かされることはないですが、それで良かったのではないかと思います。美しい人には、謎が似合うってね(笑)2014/03/23
sena
16
栗本さん、こんな捕物帖まで書いていらしたとは。美しく、影のある夢様。夢様にはどんな秘密があるのか。江戸を舞台に妖しく美しい女形が謎を解く。次巻が楽しみです。が、これって完結してるの?作者が亡くなってると、未完結だと困る。あらためて惜しい人を亡くしたと思う。2014/01/22