内容説明
横浜のホテルに宿泊して勤め人のように通いつつ取材する著者。目的地は、ごく小さな場所ながら日本史を旋回させる舞台となった、三浦半島だ。あまたの武者の血を吸った鎌倉の地を歩いては、現代の日本にとっても重要な要素である武士の起こりと「中世」の成立を考える。横須賀では記念艦として保存されている戦艦「三笠」を再訪し、『坂の上の雲』取材時の「秘話」もつづる。
目次
武者どもの世
血と看経
時代の一典型
伊豆山権現
三浦大根と隼人瓜
三浦大介
房総の海
崖と海
“首都”の偉容
銀の猫〔ほか〕
著者等紹介
司馬遼太郎[シバリョウタロウ]
1923年、大阪府生まれ。大阪外事専門学校(現・大阪大学外国語学部)蒙古科卒業。60年、『梟の城』で直木賞受賞。75年、芸術院恩賜賞受賞。93年、文化勲章受章。96年、死去。主な作品に『国盗り物語』(菊池寛賞)、『世に棲む日日』(吉川英治文学賞)、『ひとびとの跫音』(読売文学賞)、『韃靼疾風録』(大佛次郎賞)などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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chantal(シャンタール)
88
地元の街道はやはり良い。その地名を見ただけで、すぐに景色が思い浮かぶ。三浦半島と言えば鎌倉。鎌倉と言えば源頼朝。前半は平家物語のおさらいのようで楽しかった。頼朝の出現はそれまでの日本の政治や社会体制を根こそぎ変える奇跡のような事態だった。彼にも何となくヒールのイメージが付いて回るがなぜそこまで義経に辛く当たったのかも、何となく理解できる。同じ三浦一族なのになぜ「和田義盛」なのかも納得。横須賀からの太平洋戦争における海軍話など、三浦半島もしっかり日本の歴史に足跡を残して来たのだなあ。ちょっとホームシック。2019/08/13
molysk
73
坂東の地から海に突き出した三つの半島――伊豆半島、房総半島、三浦半島――が、源頼朝の覇業に果たした役割は、大きい。伊豆の北条氏と、房総の上総氏や千葉氏、そして盟友の三浦氏。半島は水軍の根城でもある。海を通じたつながりで豪族達を束ねて、一気呵成に平氏の勢力を駆逐する。鎌倉幕府を興し、京の貴族の手から土地を奪い、東国の武士のものとした。三浦水軍が拠ったあたりは、のちに黒船上陸の地となり、さらに軍港横須賀として発展をみることになる。中世から現代にいたるまで、海と陸の歴史が交わる土地としての、三浦半島をゆく。2023/07/02
ポチ
63
鎌倉幕府での頼朝と北条家、その他御家人などの事が「義経」のフォローみたいに書いてあって面白く読みました。段葛を作った理由に思わず、ヘェ〜、そうなんだ!とちょっとお利口さんになりました。久しぶりに鎌倉から城ヶ島の方まで行きたくなりました(^^)2017/08/21
レアル
54
今私が読んでいる「幕末モノシリーズ」から三浦と言えばペリー来航。なので、そちらを読みたく手に取ったがページ少な目。この巻の半分以上は源頼朝・鎌倉時代までの歴史とその後。そして北条早雲の歴史が主に描かれている。そして申し訳なさ程度に幕末から明治以降についての事が描かれていた。でもその鎌倉という時代へ進む源氏の歴史が面白い。武士というものが登場した時代でもあり、その背景も読んでいてなるほどと思う。この本を読んで予定外に鎌倉時代を堪能した。2017/10/24
kawa
40
日本史の舞台に初めて庶民が大量に登場する鎌倉時代、その舞台装置となった鎌倉を始めとする三浦半島を行く。本書によりその時代の血生臭き仁義なき戦いの興亡がほぼ掴め、歴史の大きな分岐・屈折点になったことが理解できる。さらにペリー来航の地・浦賀、幕末の軍艦造船所、日本海海戦・三笠の母港横須賀、そして話は太平洋海戦最大の軌跡「キスカ島撤退作戦」まで広がる。大楠山、極楽寺坂、化粧坂、朝比奈の切通し、青砥左衛門尉藤綱、頼朝墓、若宮大路の壇葛、鎌倉権五郎景政の御霊者、政子の墓、戦艦三笠、おりょうの墓等をテイクノート。2022/02/04