出版社内容情報
近年注目される遺跡の災害痕跡。防災、減災、復興の重要なヒントが遺跡から得られる。各時代、人びとは災害にどう向かい乗り越えたのか、わかりやすく解き明かす。「発掘された日本列島」連続講演会「復興の歴史を掘る」の書籍化。
内容説明
大洪水を予測し竪穴建物の建材をもって逃げる弥生時代の人びと、榛名山大噴火から間を置かず急いでムラの復旧を指揮する古墳時代の首長、貞観地震後に手厚い援助を与え対蝦夷政策を行う律令政府、中世の戦乱を契機に寺社門前が拡張していく奈良町、元禄江戸地震、富士山噴火などたび重なる大災害に大名の資金力を利用した江戸幕府など、災害遺跡の発掘調査や文献史料の解読から、大災害から力強く復興してきた人びとの姿が浮かび上がる。天然記念物に見る列島のなりたち、罹災資料学の提唱、各地の津波碑の警句紹介など、未来へ災害の教訓を伝える取り組みも紹介する。文化庁企画、2016年東京都江戸東京博物館の連続講演会「復興の歴史を掘る」の書籍化。
目次
1章 日本列島のなりたちと災害の記憶
2章 洪水からの復興―弥生時代
3章 火山災害からの復興―古墳時代・古代
4章 貞観地震からの復興―古代
5章 戦乱からの復興―中世
6章 江戸時代の大災害と時代の転換
7章 世界の復興の歴史を活かす
8章 津波教訓碑に学ぶ
1 ~ 2件/全2件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
AICHAN
33
図書館本。日本ほど災害の多い国はないかもしれない。この列島の住人たちは太古からどのようにして災害を乗り越えてきたのか。この本は、2016年に東京で行われた連続講演会「復興の歴史を掘る」を書籍化したものである。「文明が進めば進むほど天然の暴威による災害がその激烈の度を増す」はまさにその通りだと納得。昔からの知恵で災害に対する工夫も必要だが、それだけでは現代の災害には対処できないという話にも納得。驚いたのは、東日本大震災級の地震と津波が起きたと言われている貞観の大地震の際は遠く平安時代のことだが、(下に続く)2018/08/16
白義
15
文化庁が編集した災害考古学に関する講演集。日本は災害大国なので、過去の文献だけでなく史跡にもその災害対策の歴史が刻まれている。発掘調査によって各時代の防災や復興の過程を明らかにする興味深いテーマの講演集。面白いのは、何をどう復興するかに関してもその時代ごとの価値観が反映されていることで、そこから為政者と民衆の意識のギャップも見えてくるということ。日本ではないがローマ帝国のポンペイなんかは帝国が繁栄しすぎていたがゆえに重要性が低いとして復興に身が入らなかったのだ、というのは面白い指摘だった。貴重な示唆が多い2019/01/14
びっぐすとん
8
図書館本。新聞書評見て。旧石器時代から現代までの日本の災害の歴史を振り返る。火山・地震・台風と自然災害リスクが世界一高い国に住む私たちは命を守る方法を頭に叩き込んでおかなければならない。幾度となく襲われる災害の痕跡を残す遺跡や詳細を記した文献の研究がより進み、学校教育等で普及することが危機の際に命を救う一助になるだろう。先人が遺してくれた過去の災害を伝える石碑が忘れられてはいけない。歴史は繰り返すのだから。文化庁の編纂した本だが、役所の垣根を越えて文系学者だけでなく理系学者も混ぜての研究を進めて欲しい。2017/08/29
aochama
2
地震・噴火・津波・火事・戦乱で荒廃した後、どのように復興したのかを過去の歴史から知識や経験を分析しています。先人の必死で行ってきた努力を改めて確認しました。復興にはお金がかかるのは何時の世も同じですね。 さらに、経験を次世代に繋ぐ為に数多く作られた石碑なども紹介されています。一読の価値あります。 一方で復興出来た頃には皆忘れてしまっていたという皮肉なこともあるようです。2017/09/02
Masako3
2
★★☆ 文化庁編の本。農耕が始まった弥生時代の洪水の遺跡から、中世の貞観地震、江戸時代の元禄、宝永地震、富士や浅間山の噴火など、遺跡や地層、文献に基づいた考察。弥生時代は家ごと持ってスタコラ逃げたらしい。日本人は自然災害がいつでも起こることを肝に銘じねばならない。2017/07/22