朝日選書
溺れるものと救われるもの

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  • サイズ B6判/ページ数 243p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784022630223
  • NDC分類 976
  • Cコード C0331

出版社内容情報

【社会科学/政治】生還から40年、著者の自死の前年に刊行された本書。善悪と単純に二分できない「灰色の領域」、生還した者が抱える「恥辱」、記憶の風化への恐れを論じた「ステレオタイプ」……。改めて問い直される、アウシュヴィッツとは何だったのか。

内容説明

アウシュヴィッツ生還から40年、レーヴィの自死の1年前に本書は刊行された。善と悪とに単純に二分できない「灰色の領域」、生還した者が抱える「恥辱」、人間が持つ最も恐ろしい悪魔的側面を描いた「無益な暴力」、アウシュヴィッツが風化することへの恐れを論じた「ステレオタイプ」…これらは実際に地獄を体験した者でなければ語れない。アウシュヴィッツは、生存者のその後の人生にもつきまとった。生き残ったものたちは、生きる喜びを奪われ、いわれのない罪の意識と戦い続けた。生還以来、その体験を証言し続けてきたレーヴィは何を思い、生きたのか?そして、地獄を生き抜いた者が、なぜ自ら死を選んだのか―?古典的名著、復刊。

目次

1 虐待の記憶
2 灰色の領域
3 恥辱
4 意思の疎通
5 無益な暴力
6 アウシュヴィッツの知識人
7 ステレオタイプ
8 ドイツ人からの手紙

著者等紹介

レーヴィ,プリーモ[レーヴィ,プリーモ] [Levi,Primo]
1919年トリーノに生まれる。44年2月アウシュヴィッツ強制収容所に抑留。45年1月ソ連軍に解放され、同年10月イタリア帰還。戦後は化学者として働きつつ自らの体験をまとめ、イタリア現代文学を代表する作家の一人となる。87年自死

竹山博英[タケヤマヒロヒデ]
1948年東京に生まれる。東京外国語大学ロマンス系言語専攻科修了。現在立命館大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

壱萬参仟縁

20
1986年初出。研究もされていないのは、秘密保持者がもう一方の側に、抑圧者の側にいたこと(7頁)。権力は人間の組織すべてに、制御、簒奪されたものとして存在。権力が集団に有害か証明はないが際限ないもので上限なし(43頁)。だから暴走を阻止する仕組みが問われる部分。権力は麻薬の如し。依存症、中毒症状が強い。教条的傲慢、命令権が法軽蔑につながる(67頁)。驕れる平家久しからず。自殺は人間特有で動物になし(78頁)。排泄、裸体の強制(122頁)に人権は皆無。2014/12/21

無識者

12
手遅れの状況、なにもできない状況というのがある。事前に予防するしかないのかもしれない。ラーゲルで生き抜くには運とその場その場での利己的な精神が必要だったが、皮肉なことにそのその場かぎりの利己的な精神ナチスをささえラーゲルを作った。読んでいて暴力の支配というのが案外日本の運動部とかで思い当たること、力の誇示.徹底した序列化、があるから恐ろしい。2017/01/09

donut

7
亡くなる一年前に書かれたもの。自著に対して送られてきた手紙を手厳しく批評する箇所を読んだ上で安易に感想を書き連ねるのは憚られるが、もし自分が権力から命令を受ける立場だった場合、自分の良識に従って判断し、時には命令に背くことができるだろうかということを考えさせられた。ヘティによって解雇された戦争未亡人の話が印象に残る。また、収容所の犠牲者たちが解放後、聴衆の目の中になぜ抵抗しなかったのかという批難を読み取ってしまうという話も興味深い。生き残るべきだった他人の代わりに生きているのかもしれないといという罪悪感…2019/10/05

圓子

5
示唆に富む一冊。アウシュヴィッツが何であったかを読むより、今はこっちかな。ある所属でひとまとめにしてはいけない。責任は誰かひとりにあるのではない。語れるのは、ただ生き残って戻ってきた者だけ。よき道理に支えられていない「美しい言葉」を述べるものに注意せよ。などなど。レーヴィの著作が、『夜と霧』や『アンネの日記』ほどには読まれないのは、「不都合なこと」がより多く含まれているからかもしれない。不都合なこととはすなわち、善対悪への単純化・見ようとしなかったものの責任である。2015/12/01

ゴロチビ

4
「これが人間か」や「休戦」とは違って文章が抽象的で難解だった。虐待された側が何故「恥辱感」を抱いてしまうのか分かったような気がする。レーヴィの自死の一年前に書かれたらしいが、鬱病になるのも分かるような気がした。最後のドイツ人からの手紙の章は、レーヴィの苛立ちや焦燥感が生々しく伝わって来て、まるで自分が糾弾されてるようにドキドキした。訳者あとがきにもあるように、条件が揃えば普通の人でも虐待する側になってしまうという、人間の持つ危うさを私達は忘れてはならないと思う。2018/03/08

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