内容説明
ポールは、その予知能力をもってしても陰謀者の策謀を止めることができないでいた。彼に忠誠を誓っているはずのフレメン内部の裏切り、名義上の皇妃イルーランの暗躍に、死から蘇ったダンカン・アイダホの偶人“ゴウラ”を用いた計略―そんななか、ポールの愛妃チェイニーが帝座を継ぐ子を懐妊する。だが月が墜ちる幻視に苦悩するポールは、過酷な選択を迫られることに…。壮大な未来叙事詩、悲劇の第二部。
著者等紹介
ハーバート,フランク[ハーバート,フランク] [Herbert,Frank]
1920年、米国ワシントン州生まれ。1952年に“スタートリング”誌でSFデビューし、1956年に初の長篇『21世紀潜水艦』を上梓。1965年に刊行した第2長篇『デューン 砂の惑星』は、ヒューゴー賞・ネビュラ賞を受賞したほかSFジャンルの壁を越えて圧倒的な支持を受けた。その後、同書から始まる“デューン”シリーズ全6作を発表し、1969年刊行の本書『デューン 砂漠の救世主』(以上早川書房刊)はその第2作となる。1986年死去
酒井昭伸[サカイアキノブ]
1956年生、1980年早稲田大学政治経済学部卒、英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
133
(承前)ポールは自分の手が血まみれであり、多くの裏切りと陰謀に囲まれているとわかっていた。そのため全権力を捨てて罪を一身に負ってアラキスの砂漠へ去り、愛妃チェイニーが命と引き換えに産み落とした双子へのフレメンの忠誠を確立した。普通の独裁者なら一層のテロル的粛清を重ねるところだが、逆に自らを犠牲としてアトレイデス王朝永続化への布石を打っていた。権力に溺れない大量殺戮者とは巨大すぎる矛盾だが、その矛盾を一掃する巨人としてのポールを描き出したといえる。宇宙を統べる宗教国家という虚構を包み込む神話が誕生したのだ。2024/08/11
ねりわさび
93
宇宙を支配するポールを主人公にしたSF大河小説の第2章。第1章のスペクタクル表現は意図的にカットされ、複雑化した内政と暗躍する皇帝の暗殺計画を軸にドラマを描いている。ポールの陰鬱とする内省が引き起こす衝撃のラストに衝撃を受けました。新訳の形で復刻されて読了できたことが嬉しくもあります。いつか第3章も新訳されることを期待します。とても面白かったですね。2023/07/13
南北
60
前巻に引き続き陰謀を巡らす人々の対話が続いていくが、やがて悲劇に向かって進んでいくことになる。上巻の序文で生前の著者がケネディ元大統領を例に出して英雄に対する盲信は危険であると語っていたことが述べられているが、ところどころで語られているフレメンたちの堕落ぶりと重なって興味深く感じた。未来視ができるとされたポールだが、実際には現実と完全に一致するわけではなく、未来を予知できることが呪いにすら感じるところは人間らしいと感じた。2023/07/13
ビイーン
27
ポールの予知能力をもってしても悲劇的な未来を変える事はできなかった。頂点まで登りつめた栄光がいつまでも続く事はない。孤高の最期が救世主に相応しい。2025/01/20
Yuri
20
上司からの借本。上巻にはあまり評判が良くないとの前書きがありましたが、そんなに酷評する内容でもないかと。三部作の二作目なので、続きを楽しみにします。2023/06/11
-
- 和書
- 蹴りたい背中 河出文庫