出版社内容情報
ナチス・ドイツの大衆動員を追体験する授業を通じて、ファシズムの仕組みに迫る。ヘイトスピーチをはじめとする身近な問題にも焦点を当てた、現代社会と民主主義を再考するための必読書。「補論 日本の『自粛警察』とファシズム」も新たに収録。
内容説明
“気持ちいい”から恐ろしい―ナチス・ドイツの大衆動員を追体験する授業を通じて、ファシズムの仕組みに迫る。ヘイトスピーチをはじめとする身近な問題にも焦点を当てた、現代社会と民主主義を再考するための必読書。「日本の『自粛警察』とファシズム」も新たに収録。
目次
第1章 ヒトラーに従った家畜たち?
第2章 なぜ「体験学習」なのか?
第3章 ファシズムを体験する
第4章 受講生は何を学んだのか?
第5章 「体験学習」の舞台裏
第6章 ファシズムと現代
著者等紹介
田野大輔[タノダイスケ]
1970年東京都生まれ。京都大学大学院文学研究科博士後期課程研究指導認定退学。現在、甲南大学文学部教授。博士(文学)。専攻は歴史社会学、ドイツ現代史。2024年『検証 ナチスは「良いこと」もしたのか?』(共著)で紀伊國屋じんぶん大賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
さとうしん
18
初版に引き続いての読書。ファシズムはどのようにして生じるかというメカニズムを体験学習(と座学)によって学ぼうという試みだが、日本では制服の着用や運動会での行進といったような形で小学校から似たようなことをやらされており、同調圧力に慣れ親しんでいるという指摘に考えさせられるものがあった。文庫版で追加された補論ではコロナ禍のもとでの日本型「お願い」による責任の所在が見えない危機対応や自粛警察のような動きをドイツの対応と比較している。2025/04/16
どら猫さとっち
13
ファシズムはいかにして生まれるのか。実際にその特徴を捉え、行為を実験した大学の授業があった。ナチス・ドイツを模した団体から、人は何故ファシズムに惹かれ、団体のなかで暴走するのか。それを実践した大学教授の記録が本書である。実際やるとなると、気持ち悪さが先んじて逃げ出したくなるが、本書を読んでもその体感が味わえる。そこから知性と人間らしさを見つけ出すのが、ファシズムにだまされない方法といえるだろう。2025/09/21
Katsuto Yoshinaga
8
甲南大学の田野大輔教授(著者)は、学生たちに「ハイル、タノ!」と叫んでナチス式の敬礼をさせ、白いシャツにジーンズ(シャツはパンツイン)を義務付け、笛の音に合わせて教室やグラウンドでの行進や糾弾行動を行わせる。タノ教授を指導者とした独裁体制の支持者と化した学生たちが示威行動を繰り広げる。これがタノ教授の「ファシズムの体験学習」である。なんとも凄い授業である。よく考えつき、実行したものだ。本書は、ファシズムを実感する模擬実験の過程と意義、注意点を記したもので、これが実に面白い。(コメに続く)2025/05/22
TOMTOM
4
大学の授業で、体験学習を交えながら「ファシズムとは何か」を学ぶ記録。ファシズムとは、集団の帰属意識、責任感の欠如(権威主義)、敵の想定、を主たるものと考え、いくつかの集団行動を行うことで集団の一員であることを認識させる。体験授業の感想で「だんだん高揚していった」「カタルシスを感じた」などがありその後の授業でいかに客観視するか、ファシズムがどう成り立っていくかをしっかりとフォローすることで、日本でも起こっているヘイトスピーチなどの似非民主主義に歯止めをかけていきたいといきたいと筆者の願いが伝わってくる。2025/06/11
トト
3
2010年からの10年間、ファシズムを体験するという授業を実施した甲南大学教授の著書。①絶対的な権力者、指導者が居て②規律正しく行動して団結し③攻撃しても良いとされる敵を作る・・・ことで、独裁の土壌が形成される。そして権力者の意向に従う事で責任から解放された人々が、同調圧力や自己責任論を通じて、正義感で敵を攻撃する。授業は簡易なロールプレイではあるが、ファシズムの空気が簡単に作られることを知る。マスメディアやSNSで起きる騒動を鑑み、ファシズムの種があちこちに落ちていることに不安を感じます。まずは自覚を。2025/06/14