出版社内容情報
元教師の能面師、横浜のドン、築地のヒール、木更津の「悪人」、久里浜病院の男、羽田の老漁師……。『東京タクシードライバー』で13人の運転手の人生を厳しくもあたたかく描き出した山田清機が紡ぐ、不器用な男たちの物語。魂のノンフィクション。
内容説明
東京湾岸で生きる市井の男たちの物語。急速に変化する時代の流れにはあえて乗らず、自分の節を守って生きる男の背中を描く。そのように生きる、そのようにしか生きられない6人の男の人生とは。現代ノンフィクションの旗手が、せつなくもあたたかい筆致で描き切った傑作。
目次
第1話 馬堀海岸の能面師
第2話 横浜のドン
第3話 築地のヒール
第4話 木更津の「悪人」
第5話 久里浜病院のとっぽいひと
第6話 羽田の老漁師
著者等紹介
山田清機[ヤマダセイキ]
1963年富山県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、鉄鋼メーカー、出版社勤務を経て独立(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Nao Funasoko
17
東京湾沿岸の市井の人々をめぐるルポルタージュ。"東京湾岸"という地理的切り口も、訪ね歩く先の人々もそれなりに興味深い。なのにどことなく物足りなさを感じてしまう。取材後記「S君のこと」が一番面白かったように思うのでページ数の問題ではないのであろう。もし、あとがきにあるような著者の私的理由によって執筆編集が早回しになってしまった結果としての本作の出来栄えだとしたらそれはそれで著者自身にも心のどこかに引っかかりが残っているのではなかろうか。著者もまた「不器用な人生」を歩んでいるのかもしれない。2019/11/18
しゅー
9
★★★楠木建の書評で興味を持った。なんとも説明の難しいノンフィクション本。大きな事件や誰もが知る有名な人物を扱うわけではなく、東京の湾岸地域とそこに生きる市井の人々を描く。感動にも涙にも笑いにも流れず、まさに淡々とした筆致が新鮮だ。陳腐な表現になってしまうけれど、まさに「人生だな〜」としか言いようのない感慨に襲われる。著者のお父様がおっしゃるように繰り返し読んでみたくなる不思議な味がある本だった。著者が最初に勤めた鉄鋼会社で抱いた違和感は、私も社会人1年目に感じた気持ちだったのではげしく共感してしまった。2024/02/16
Katsuto Yoshinaga
9
本書の後半部分で著者は「市井という言葉が少し怖い。いつか死んで、時の流れに埋没してしまうことが怖い」と書いている。私は以前、この種のルポが非常に好きでよく読んでいた。市井の人々のルポはやはり面白い。能面師、沖仲仕、築地の仲卸、羽田の漁師といった私が全く知らない職業人の仕事の概要、仕事観、そしてちょっと垣間見えるその人の生活に、私は興味津々だからである。最終稿での編集者とのやりとりに、編集者がドキュメンタリー番組好きの理由に怖いもの見たさを上げている。私の市井ルポ好きは、怖いもの見たさなのか。2019/10/31
大先生
7
東京湾岸で生きる6人の男の人生を綴ったノンフィクション。6人それぞれに、波瀾万丈とまではいわないまでも平凡とはいい難い人生ドラマがあります。不器用かもしれないけど、なぜか惹かれる、そんな6人です。ところで、第六話「羽田の老漁師」に出てくる伊東さんは、齢80を超えても現役のシジミ漁師として年収700〜800万円も稼いでいるそうです。そして、大田漁協では、伊東さんに限らず、跡継ぎがいない人が多いそうです。そこの体力自慢の若者よ!UberEatsよりシジミかもしれませんよ!(笑)2020/08/11
kk1076
2
面白かった。 個人的には’横浜のドン’が印象に残った。 ※エリックホッファーに引っ張られているかもだが…2020/04/05