出版社内容情報
検閲があるなか、真実はどこまで伝えられたのか。夫から、息子からの手紙で家族は何を知ったか。日中戦争から太平洋戦争までの兵と家族・故郷の交信の記録から、修羅の戦場を兵たちがいかに生きたか、死んだかを読み解く貴重な記録。
内容説明
検閲があるなか、真実はどこまで伝えられたのか。夫や息子からの手紙で家族は何を知ったか。日中戦争から太平洋戦争までの兵と家族・故郷の交信の記録から、修羅の戦場を兵たちがいかに生き、死んでいったかを読み解くことで、近代日本の成り立ちが浮かび上がる。
目次
序章 兵の近代を問う―兵は何を受容したか
第1章 兵の交信・きずな―手紙と遺書
第2章 侵略の戦場―日中戦争の日記
第3章 修羅の戦場―太平洋の体験記
第4章 兵の墓標―死の祭祀と碑
終章 軍隊秩序の史的考察―命令服従体系の成立と日本社会
著者等紹介
藤井忠俊[フジイタダトシ]
1931年山口県生まれ。早稲田大学法学部卒業。現代史研究家。「現代史の会」主宰者・研究主幹。2018年、1月逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kokada_jnet
76
朝日新聞社、岩波書店、大月書店から著書を出している人で、後書きでも「民衆史の視点」から執筆したとあるが。左翼的なバイアスがほとんどなく、兵たちの視点にたち、主に日中戦争時代を対象にして、資料を読み解く本であった。特に、検閲の中の妻と夫の手紙の交換を詳細に紹介した章が、感銘をよぶ。夫に一向に手紙が届かない状況の中、手紙を書き続けた妻の事例あり。日本各地の兵隊の合同墓(「陸軍墓地」等)について調査した章や、軍隊内秩序について論じた章もあり。自分の実家の近所にも「陸軍墓地」はあった。2022/05/03
nnpusnsn1945
52
日本兵の戦場について主に扱っているが、日記や軍事郵便、戦記、慰霊や軍制度まで触れられている。範囲が非常に広く、発見もそれなりにあった。空閑昇少佐が捕虜になった時に彼を高速した中国兵は、陸士時代の留学生(教え子)であったようだ。なお、伊藤桂一の『兵隊たちの陸軍史』も本書で引用されている。2022/05/28
CTC
10
7月の朝日文庫新刊、初出は00年朝日選書。著者は近代史や民衆史研究家らしいが、奥方は文春の編集者で松本清張番、のちに記念館の館長まで務めている。信頼されていたのだろう。本書は手紙や手記を読み解き“兵”の立場からの戦争の実相を考察するものだ。解説を『日本軍兵士』の吉田裕が引き受けていることから、一定の評価を得たテキストと思料するが、将校には手厳しい。小野田寛郎さんのことなどは詐欺師とレッテルしているに等しい評価だ。一方で例のGF長官古賀峯一の死を、捕虜になったのちの「自刃」と断じるなど、評価に困る一冊。2019/08/06
逍遥遊
4
62-02-20221113 うーん。兵士と兵を分けているところ、なるほどねぇ。 これであれば、『孤島戦記―若き軍医中尉のグアム島の戦い』の方が、リアリティにとんでいるよね。 https://bookmeter.com/books/9603422022/11/13