内容説明
13人の運転手を見つめた、現代日本ノンフィクション。妻に逃げられた元ホームレス・石原裕次郎に「タメ口」をきいた男・気の優しい、いじめられっ子が持つ誇り…。事実は小説よりせつなくて、少しだけあたたかい。著者、渾身の傑作。第13回新潮ドキュメント賞候補作。
目次
第1話 奈落
第2話 福島
第3話 マリアと閻魔
第4話 「なか」
第5話 ひとりカラオケ
第6話 泪橋
第7話 缶コーヒー
第8話 愚か者
第9話 偶然
第10話 平成世間師
著者等紹介
山田清機[ヤマダセイキ]
1963年富山県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、鉄鋼メーカー、出版社勤務を経て独立(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ふう
70
「東京」とあるように、都会ならではの事情を抱えたタクシードライバー13人へのインタビューをもとに書かれたノンフィクション。とくにそういう人を選んでインタビューしているからでしょうが、ドライバーになるまでの経歴やなってからの経験が濃く重く、ほかの職場とはちがうものを抱えているのだなと思いました。辛すぎるくらいに。でも、もしわたしがタクシーを利用するとしたら、「いろいろあったけどこの仕事が好きで、お客さんも同じようにいろいろあるんでしょうね。」と思ってくれる、無口で穏やかな運転手がいいですね。2016/04/02
かず
65
★★★Kindle。タクシードライバーという職業は、ある程度の年齢を経てたどり着く方が多い。 その分、様々なな人生経験をもつドライバーもいる。そこにスポットをあてたノンフィクションルポ。 それぞれの人生劇場は面白かったが、所々主人公の気持ちなのか、著者の考察なのか判断しにくい部分がある。 また、やたら哀愁を漂わせようとしている風がきになった。2019/10/09
Y2K☮
36
タクシードライバーのリアル。デジタル無線になる前の話や長距離の客に当たるための駆け引きが面白い。この職業に辿り着くまでの十人十色の濃厚な人生模様も含め、訪問販売に従事するセールスマンに似ているかも。一日中ひとりで自由といえば自由だし。ただ狭い空間でいけ好かない客と長時間過ごすのは拷問だろう。運転も命懸け。社会を知る上で幅を広げてくれる良書だが著者のあとがきはどうかな。彼よりも彼のストレスの捌け口にされた人々に同情した。自分みたいな客に怒鳴られて人知れず涙を流したドライバーもいるはずって思わなかったのかな。2021/04/10
黒猫
27
じわじわくる読後感。小泉元総理が、「人生いろいろ。会社もいろいろ。社員もいろいろなんです。」ってずっと前に言ってだけど、本当に色んな人生があるんだと感じた。タクシードライバーにスポットを当てて書くなんて、なかなか面白い発想だなあと思っていたら、作者自身もパニック障害になったり苦労をされていた。印象的な言葉がある。「どんなに辛くても人は生きなければならないなどと私は思わないし、生きていさえすればいいことがあるとも思わない。」作者自身も苦労をしなければ、書けない一文だ。あとがきに感動するのは初めてです。2016/12/28
カブ
26
タクシーという密室ならではのエピソード、運転手の人となり、ノンフィクションだからこそ深くてせつない。13人のドライバー一人ひとりにドラマがある。2016/02/15