内容説明
伝染病と悪疫の恐怖におののく古代ローマ帝国の諸都市。そこに登場する治癒神イエス。差別され、社会の外へ追放されていた病人を求めて遊行する弟子たち―。原始キリスト教における「病気なおし」活動に注目し、福音書の奇跡物語を新しい視点から読み解き、キリスト教成立の謎に迫る。
目次
序章 「病気のメタファ」とその呪い
第1章 治癒神イエスの誕生
第2章 治癒神イエスとイエスの運動
第3章 遍歴のカリスマ・治癒神イエス
第4章 治癒神イエス登場の地中海的背景
第5章 イエスにおける〈触〉のドラマトゥルギー
第6章 キリスト教神話の構造(シンポジウム)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
うえ
7
労働観の変遷と普遍についての指摘が面白い。「中世キリスト教が、ゲルマン人(もとは牧民)の教化にあたってもっとも苦心したのは、労働からこうした牧民社会特有の苦役観をぬきとって、労働を、神の讃美する行為として、あるいは「徳」を完成する道として教えこむことにあったのですが、それはいまだに成功したとは言い難い。労働は、ヨーロッパ人にとって依然として罰であると…レヴィ・ストロースなどもいっています。ヨーロッパ人にとって労働が概して神の罰だと考えられていること、この事実は…記憶しておくべきことである」2023/08/03