朝日文庫<br> 聞き書き ある憲兵の記録

朝日文庫
聞き書き ある憲兵の記録

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  • サイズ 文庫判/ページ数 262p/高さ 15X11cm
  • 商品コード 9784022606372
  • NDC分類 916
  • Cコード C0121

内容説明

「日本鬼子(日本の鬼め)!」と叫んだ中国の人びとの声が今も耳を離れない。―旧満州国関東軍憲兵はそう懴悔する。東北の優秀な一農村青年が、どのようにして恐ろしい憲兵となっていったか。どのような手段で反満抗日分子を弾圧したのか。そして戦後10年の抑留生活の中でどのように罪を自覚していったか。自らの半生を語る主人公の言葉は、強い平和への願いと深い悔悟の念に貫かれている。

目次

村から兵を送り出す構造
勤務としての兵役
憲兵の12年
敗戦と混乱
戦後への長い道程

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

駄目男

13
甲種合格をした山形の優秀な農村青年土屋は、一兵卒として満州に送られる。國を出る時は「出世して帰って来いよ」との声に背を押され、何が何でもその声援に応えたいという気持ちを胸に、同僚にライバル心を燃やし職務に励むが、遅い出世に焦り憲兵隊を志願する。「監軍護法」の一人前の憲兵になるには三カ月の厳しい試験に合格しなければならない。試験に受かり憲兵隊で上官が行う、匪賊や共産軍の兵士などに行う激しい拷問を目の当たりの、以前は虫も殺せる一青年の変貌を描いている。いつしか、その目も覆う残虐な拷問に手を染めていく。2023/06/12

モリータ

12
◆チチハルで憲兵を務めていた土屋芳雄(1911-2001)への聞き書き。朝日新聞山形版に'84-85年連載、'90年刊。◆自らの現地人に対する苛烈な取り締まり、拷問などの残虐行為を公にする。◆が、罪を自覚したのは敗戦直後やソ連での抑留時ではなく、中国での戦犯取り調べまでの緩慢な時間だった。◆敗戦後、首に賞金が懸るほど市民に憎まれたというが、正直、処刑や嬲り殺しにならずよく生きて帰ってこられたものだと思う。認罪させたうえで起訴猶予とした中国側には思惑もあっただろうが…◆日本軍の杜撰な防諜体制、捜査の描写も。2021/05/26

Toska

9
満洲国で勤務した一憲兵の記録。戦闘中ではなく、治安活動の一環で犯した残虐行為の告白は珍しい。このような力任せの弾圧で本当に支配が上手くいくのか?…現在ロシアがウクライナに行っていることを見ると、「上手くいく」という思い込みは昔も今も意外と多いのだろう。もっとも、本書に出てくるような現場レベルではそこまで考える余地もなく、職業上の使命感や、人によってはサディスティックな異常性に駆られての残虐行為が行われていたものらしい。2022/06/18

korrya19

9
とある必要があって読んだ。第二次世界大戦中の日本の憲兵が中国人に行った残虐非道ぶりはある程度知ってはいたけれど、聞き書きというスタイルで著された本著を読むと、日本人であることが辛くなるほど。しかし、隠すことなく告白した勇気に感謝したい。武勇を誇るのではなく、「あの頃の自分は心を失っていた」と言うように、取り返しのつかないことへの反省と同じ間違いを繰り返さないことへの願いがこめられている。この憲兵と同じ残虐な行為をしてしまう可能性を誰もが秘めているからこそ、常に私たちは過去の過ちを学び続ける必要がある。2015/02/03

しろぶた

5
芝居の勉強として読みました。と、同時にずっと薄っぺらにしか知らないことだったので、日本がしてきたことをよく知ることのできる本です。知らないことは罪だと思います。どんな考え方、どんな意見があるにせよ、正しい知識がなくては。全うな人間ならば、自国のしてきたことを知るのは苦しいです。でも、私たちは知らなくてはいけない。事実は事実として認めなくてはいけない。戦争は本当に無くなればいい。戦争が無くなればいいのに。2013/05/07

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