内容説明
「笛にうかれて逆立ちすれば」「りんごの花びらが風に散ったよな」…。日本人だれもが抱く“はるかな故郷”のイメージを歌いあげて、圧倒的な共感を呼んだ美空ひばり。その生い立ちから、大スターとなるまでの栄光と苦悩とを、戦後社会というスクリーンに投影させて描いた骨太の評伝。
目次
第1部 笑顔と涙の遠い道(私は街の子―生いたち;リンゴの花びらが―スターへの道;わかれ道―ひばり自身の追憶から;さよならの向うに―ひばりはどこへゆく)
第2部 地球の上に朝がくる―歌ごよみ30年(戦争のなかをゆく歌謡曲;歌でみる20年)
第3部 かくて、それからの美空ひばり(5・30、ひばりとの出会い;わが青春の美空ひばり―戦後映画史の流れにつづる;ゴッド・マザーの死)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ワタナベ読書愛
1
1987年刊行。初出:1965年他。戦後、9歳で歌手デビューし、戦中・戦後の庶民を歌で励まし続けた昭和の歌姫:美空ひばりと、母:喜美枝の生涯を、昭和の歌謡・芸能の歴史や時代背景も交えて書いた本。メディアでさんざんたたかれ、騒がれ、知識人たちにはそっぽを向かれ、信頼していた人から裏切られ…様々な苦難が続く波乱の生涯。「日本一」の重圧に耐え、歌い続けた一人の女性と、それを支える人達の知られざる人生。当時を体験した筆者ならではの、迫力や愛情、理不尽さに対する怒りなども伝わってくる。見事な昭和の庶民の歴史資料。 2024/01/28
wsmr
1
著者があまりに美空ひばりサイドに立っているのでどこまで真実かというのは怪しいけども(創られた「日本の心」神話でも批判されていた件とか)美空ひばりとはどのような人物だったのかを知るのに良い本だった。2012/10/07
MIRACLE
1
二部構成だった旧著に、刊行後に発表した文章を加えた構成になっている。第一部は歌手・美空ひばりの生い立ちで、全体の5割を占める。第一部をよめば、おおよそのことがわかる。第二部は戦前戦後の歌謡曲への竹中の評論で、全体の4分の1を占める。評論には竹中の個性というか、情念に満ちていて、正直とまどった。竹中は「大衆」が好きなようだ。第三部は旧著刊行以後の、ひばり関連の文章だ。ひばり母娘との関係についてのべている。旧著との重複が気になった。本書の方がちくま文庫より装丁がよいので、この版をおすすめしたい。(誤字を修正)2012/02/08