内容説明
福島第一原発の破滅的な事故にいたるまでの70年間、日本の原子力開発はどのように進められてきたのか。大戦中の実らなかった原爆研究の後、戦後は核平和利用の旗のもとで世界にもまれな「安定成長」をとげてきた日本の原子力発電だが、核燃料サイクルも使用済燃料処理も計画通りに進まず既設原子炉の老朽化が進む―それらを担ってきた政・官・産・学・自治体のせめぎあい、さらに背景にある核をめぐる国際政治などをあざやかに切り分けた本格的通史。福島事故後、再刊希望が殺到した旧版を改訂した待望の新版。
目次
日本の原子力開発利用の社会史をどうみるか
戦時研究から禁止・休眠の時代(一九三九~五三)
制度化と試行錯誤の時代(一九五四~六五)
テイクオフと諸問題噴出の時代(一九六六~七九)
安定成長と民営化の時代(一九八〇~九四)
事故・事件の続発と開発利用低迷の時代(世紀末の曲がり角(一九九五~二〇〇〇)
原子力立国への苦闘(二〇〇一~一〇))
福島原発事故の衝撃
著者等紹介
吉岡斉[ヨシオカヒトシ]
1953年、富山市生まれ。東京大学理学部物理学科卒業。同大学院博士課程単位取得退学。現在、九州大学大学院比較社会文化研究院教授(社会情報部門社会変動講座)、同大学副学長。専攻は科学技術史、科学技術社会学、科学技術政策。政府の「東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会」委員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
LUNE MER
16
この一冊で戦後の原子力発電に関する歴史が、政治的な側面と技術的な側面の双方から中立的に近い立場で解説されている。こんな風に一本の軸に近い形でよく纏められている文献は他にはないのではなかろうか。福島の原発事故により、政治家や経済界が誤魔化してきた原発のリスクが広く認識された。しかし、一方でそのことが今後の原発のあり方について、技術的な内容も無視して完全否定してよいかというとそれも早急(だと個人的には考えている)。原発のリスクと原発を止めることによるコスト。自分なりの考えを持つ上で本書の提供する知識は貴重。
ステビア
13
ゼミの合宿で原発を見に行きます。そのテキストとして。著者は一応親戚です。2014/08/28
学生
6
3/2(土曜日)23:00~00:00 ETV特集 膨張と忘却~理の人が見た原子力政策~2024/03/02
みつか
6
国際的な原子力の社会史をざっくり復習したくて手にとりました。ですので中盤の濃厚かつ重たそうな箇所(非常に丁寧に執筆なさっているのですが)、というか90%近くすべてパス、、、^^;)第1章と第8章福島原発事故の衝撃のみ読みました。2019/05/14
きぅり
4
私見は極力省いた原子力に関する社会史を記述した本。原子力賛成派が次の原発を稼働させるまでに至るだけの支持が得られない理由と、反対派の活動が冷ややかな目で見られる理由を再考するために一度読むといいと思った。2015/09/20
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