内容説明
無宿の博徒、国定忠治は幕末の嘉永3年(1850)、大戸の関所で、1500人の観衆を前に壮絶な磔を演じた。磔刑後、忠治は希代のアウトローのヒーローとして甦る。忠治に華々しい最期を演じさせたのは、菊池徳である。「鷙悍の徳」と称されるように、猛禽類のような猛々しい性格の女性だったという。忠治の死を乗り越えて、自ら事業に乗り出し、大地主となった女侠、たくましく自立して生き抜いた庶民の一女性の波乱万丈の生涯とは、どんなものだったのだろうか。徳の生涯を通して、幕末維新の激動の時代と社会を見直してみる。
目次
序 蚕繁昌の国の女たち(絹と識字力;「我意申す」「我侭」な女たち)
1 自侭から自立へ―菊池徳の前半生(茶屋の看板娘;奉公人からカカ座を奪取;亭主が死んで一家の主)
2 国定忠治を男にする―女侠の誕生(国定忠治と徳;びびる忠治に活を入れる;
著者等紹介
高橋敏[タカハシサトシ]
1940年、静岡県生まれ。東京教育大学大学院修士課程修了。国立歴史民俗博物館名誉教授。文学博士。日本近世・近代史専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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武隈
1
とても面白く読みました。同じ著者の「国定忠治」を読んで、忠治の妾「徳」が気になってました。現代に残された古文書から浮かび上がる上州の女性の逞しさ、その背景にある米の採れない貧しい農村が「蚕繁盛」になる女性の働き。「カカア天下」が生まれた理由が判ります。徳は落ち目の忠治のため、最期を派手なパフォーマンスでヒーローに仕立てあげます。忠治亡き後は、宿場での商売を狙い暗躍し、失敗するとさっさと手を離す変わり身の早さ。明治になった時には大勢の使用人を抱える大地主。後年「女国定」と呼ばれる本当にしたたかな女性でした。2012/07/06
鼻毛カッター
1
上州の女性は、逞しく、そしてしたたかだった。忠治の死後、地域のボス格である名主に近づき、誓約書まで交わして、宿場への進出(出店)を画策し、それが阻止されるとあっさり愛人契約?を解消しているのが面白い。少なくとも養蚕で現金商取引がさかんだった幕末~明治初期の上州では女性は一方的に抑圧されるだけの存在では無かった2010/05/02