内容説明
都市の繁栄の中心に、常に寄り添うように存在しながら、「語られざるもの」「隠されたもの」として歴史の隙間に埋もれていった“花街”。往時の繁栄もいまいずこ、もはや痕跡すらとどめていない場所も多いが、その「配置」や「来歴」には、時の権力者の意図がくっきりと刻印されていたりもする―全国100都市に及ぶ現地研究が、「遊廓」とも違う、その隠された歴史、都市形成に果たした役割をあぶり出す。
目次
序章 花街のイメージ
第1章 花街―立地・制度・構成
第2章 都市再開発から生まれる花街
第3章 街のインキュベーター
第4章 慣例地から開発地へ―東京の近代花街史
第5章 遊蕩のミナト―神戸の近代花街史
第6章 遊所から新地へ―大阪の近代花街史
第7章 謎の赤線を追って―鹿児島近郊の近代史
終章 なぜ、花街か?
著者等紹介
加藤政洋[カトウマサヒロ]
1972年長野県生まれ、2000年大阪市立大学大学院文学研究科後期博士課程修了、博士(文学)。専攻は文化地理学。流通科学大学商学部助教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ja^2
9
花街と色街は違う──? 芸を売る芸妓(ま、芸者さんですな)がいるのが前者で、体を売る娼妓が いるのが色街だと。ふむふむ、なるほど。▼しかし、一般 人はこの辺りを一緒にして花街と理解している──と指摘され、なんだか最初から面目ない気持ちになった。 とはいえ、花街も色街も実態は多分に重なり合っている 場合が多いようだ。▼都市計画法などない時代のことだから、規 制も出来なかったのだろうが、もし規制ができ たとしても、花街は大人のテーマパーク的な役割を持って 都市の発展に良いように使われたような気がする。 2022/06/13
kenitirokikuti
8
図書館にて。2005年刊行。明治から昭和初期にかけて全国津々浦々に存在した狭義の「花街」はほぼ消え去った。現在全国区で知られているのは京都の祇園ぐらいだろう▲遊郭&花街はいっしょくたにいわゆる江戸時代の遊郭吉原でイメージされるが適切ではない。明治の公娼制度の確立により、原則として売春を伴わない「花街」も新たに作り出された▲しかし、昭和初期のさには娯楽や遊興がモダン化しており、すでに遊郭&花街は下火。戦後は売春防止法に巻き込まれて消滅する▲▲格式の問題で、軍には必要だったんだな、と。将官は喫茶店に入らんわな2019/09/30
takao
3
ふむ2023/12/27
nranjen
3
図書館本。花街とはなんぞやという疑問から借りて読んだ。花街と遊郭の違いが、明治時代からの政府の規制と促進(!?)によって変化してきたことが、各地の事例によって説明されている。「新地」に「遊郭」を設けたのが政府主導だったことに改めて驚きを覚える。学術的だが非常に興味深いアプローチの本。かつ視点が明確に貫かれていて論文としても素晴らしいと思った。2019/07/16
Shinya Fukuda
1
花街は都市を起動させる装置として明治期に登場した。維新期は藩主がいなくなった屋敷の跡に建てられることもあった。経済的効果が大きいため街中に花街が建てられるようになる。実業家、地主、政治家がこの利権に群がる。松島新地移転問題は政治問題になる。やがて、風紀上の問題が発生し警察の規制が入るようになる。しかし花街自体を規制する意図はなくこの地域なら営業してもよいというように地域を指定するようになる。芸妓と娼妓の区別も進み花街と遊郭も区別されるようになる。花街が衰退した原因の一つとして著者はカフェーを挙げる。2023/01/23