内容説明
公園の隅に置かれた男の死体をめぐる話「帰郷」、慰安婦ゴゼイと徴兵を拒否した昭正の切ない愛に生者と死者の声がかさなる「群蝶の木」、日常生活を反転させる不安をえがく「剥離」「署名」など、『魂込め』で川端賞・木山賞を受賞した著者があらたに到達した四つの小世界。
著者等紹介
目取真俊[メドルマシュン]
1960年沖縄県生まれ。琉球大学法文学部卒業。83年『魚群記』で第11回琉球新報短編小説賞、86年『平和通りと名付けられた街を歩いて』で第12回新沖縄文学賞受賞。97年『水滴』が第27回九州芸術祭文学賞ののち、第117回芥川賞を受賞。著書に『水滴』(文芸春秋)『魂込め(まぶいぐみ)』(朝日新聞社)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ダイ@2019.11.2~一時休止
80
短編集。怖い話が多いですねぇ。中でも剥離・署名が印象的。2017/05/17
翔亀
44
【沖縄61】ときに魂をゆさぶる小説に出会うことがある。物語に感動したとか、人物に感心したとかとは違う。自分の何かに突き刺さるものだ。沖縄関連本を読み続けてきて、何冊もの本に感動し、感心した。しかし沖縄自体が遠いこと(地理的にも歴史的にも)もあって、どこか他人事であった。共感しようという意思が先んじていた。しかし、この作品はそういう他者としての沖縄を超えて突き刺さってきた。■4編からなる短編集。いずれも今の沖縄が舞台。うち2篇は沖縄の歴史/民俗に深く根付いた作品。ひとつがユタもうひとつが沖縄戦が主題だ。↓2022/01/23
三柴ゆよし
12
野晒しにされた死体からはじまるハートフル青春小説「帰郷」、生者と死者の声が時を越えポリフォニックに呼応する表題作は安定の目取真印であり、無論すばらしい作だが、特徴的なのはその二篇に挟まれるかたちで収録された「剥離」と「署名」。こちらは些細なことから日常生活に亀裂がはいり、自己と他者、妄想と現実のネガ・ポジが反転してしまう恐怖を描く。私は読んでいて、吉田知子の小説をおもいだした。いずれにしろ佳作揃いの短篇集であり、目取真俊にはほんとうにハズレがないとおもう。2017/06/17
天 道
0
いつも同じところで涙が止まらなくなる。
くにお
0
他の三作も良かったがやはり表題作が圧倒的に素晴らしい。そして重い。現代を生きる義明と戦前・戦中・戦後を生きるゴゼイの記憶が交差しながら展開するストーリー。そこで描かれるのは『魚郡記』から繋がる沖縄人の加害者性という重いテーマ。『平和通り~』の頃の作品よりも確実に洗練された表現になっている感じ。2016/01/08
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