出版社内容情報
発売後即重版!
……わたしは肺がんと診断された。
その直後から患者はいくつもの選択に直面する。何を選択し、何を選択しないのか。最も大きな選択は、いっさい治療はしない、というそれである。わたしがそれに心惹かれたことは事実だ。他にも(大方はここから始まるが)病院の選択(実に難しい)、医師の選択(極めて困難)、治療法(その病院を選択した時点で大方は決まる)にはじまって、食べものは? 代替療法はどうするか。医師や看護師さんに治療の疑問や不安、迷いをいつ、どこで、どのようにして訊いたらいいのか等々。
検査入院に向かう頃、『沈黙の春』を執筆中に乳がんを宣告されたレイチェル・カーソンを思いだし、最後となった作品『センス・オブ・ワンダー』の1節を繰り返し口ずさむ。
はじまった入院生活。患者同士で分け合った メロンパン(そんなに糖分とるのはまずくない?)。血縁ではなく、病を介在とした結縁のつながり。放射線台での時空は、なつかしい人々と再会を果たす時間に決めた。あのひとがいた、このひとが。7年の介護の末に見送った母から、子どもの頃から言われてきた。差別についてはむろんのこと、あらゆる人間の関係性についても。「される側」の声を考えるように、と。患者もまた、ある意味「される側」のひとりだ。母は婚外子を生んだ女だった。
ひとはみな、読んできたもの、出会った人たち、食べたものでできている。I’m what I read, eat,meet. 観たもの、感じたもの、聞いたもの、考えたもの、実行したこと、しなかったこと等々。すべてがわたしを作ってくれている。失望も傷さえも喪失すら。
現在時点における結論。がんであるということは、あくまでもわたしの一部でしかない。病いに、わたしの精神まで占領されてなるものか! と今日も鼻息荒いわたし。
退院して3度目のクリスマス。元気です。 落合恵子
〇「目次」から(一部)
*第1章 ふたつの病院
2023年6月A病院へ/「生検失敗」/B病院にて 2度目の生検/不信の時/7月、時間はまだある/ドアノブのないドア ひとり家族/血縁を問う――絵本『あおいアヒル』
*第2章 新しい入院先 C病院
C病院2023年8月/見逃された変化、見逃した違和感/治療法の選択/医師や看護師さんにいつ訊いたらいい?/脱毛とウィッグとロケット/血縁と結縁 /23年秋来年のスケジュールノートブック/再入院悪寒から、身体と食べもの
*第3章 放射線治療 思いだすひとびと
PS(パフォーマンスステータス)と放射線治療/放射線台上にて 池波正太郎さんの贈りもの/クレヨンハウスのこと/「ケーキおばさん」募集
*第4章 身体と病と放射線
オレゴン州ポートランドの記憶/身体の「部位」と「全体」/ヒポクラテスへ /放射線治療室受付にて 父のために選んだ漢方/すれ違い 医師が患者になるとき
*第5章 免疫力を強化する
免疫力をあげる/「ファイトケミカルスープ」/西洋医学と漢方医学/あらためて「医食同源」/『サンタクロースっているんでしょうか』
*第6章 2度目の春、そして夏
2025年4月、2度目の春――再発まで待たなくてはいけないのか?/スーザン・ソンタグ最期の日々/生活の質/シシリー・ソンダースの実践/エリザベス・キューブラー・ロス 5つの段階を辿る/散骨/絵本『ねえ、おぼえてる?』/ 『ハーレムの闘う本屋』/母がいた朝、わたしがいる夏
ほんの、一部
あとがき――いま、ここから、明日へ
内容説明
がんと診断されて、何を選択し、何を選択せずに来たか…。治療法、食べもの、代替医療をどう考えるか等々。「すること」と、「しないこと」と、ひとつひとつを自分で決めるしかない。悔やまないためにも。だから、頑固な患者でいく、と決めた。そして2年半。元気でいる。
目次
第1章 ふたつの病院
第2章 新しい入院先 C病院
第3章 放射線治療 思いだすひとびと
第4章 身体と病と放射線
第5章 免疫力を強化する
第6章 2度目の春、そして夏
ほんの、一部―本があって、緑が、花があって。そして…
著者等紹介
落合恵子[オチアイケイコ]
1945年、栃木県生まれ。作家。文化放送退職後、子どもの本の専門店「クレヨンハウス」と女性の本の専門店「ミズ・クレヨンハウス」、オーガニックレストラン等を、東京と大阪で主宰。総合幼児教育誌「クーヨン」、生活雑誌「いいね」の発行人。第24回、放送人グランプリ2025のグランプリ特別賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。




