出版社内容情報
高名なゲーテ学者・博把統一は一家団欒のディナーで、彼の知らないゲーテの名言と出合う。ティー・バッグのタグに書かれたその言葉を求める旅の先に、行き着いた場所は……。若き才能が描く、アカデミック冒険譚!
内容説明
高名なゲーテ学者・博把統一は一家団欒のディナーで、彼の知らないゲーテの名言と出会う。ティー・バッグのタグに書かれたその言葉を求めて、膨大な原典を読み漁り、長年の研究生活の記憶を辿るが―。ひとつの言葉を巡る統一の旅は、創作とは何かという深遠な問いを投げかけながら、読者を思いがけない明るみへ誘う。若き才能が描くアカデミック冒険譚!第172回芥川賞受賞作。
著者等紹介
鈴木結生[スズキユウイ]
2001年福岡県生まれ。2024年、「人にはどれほどの本がいるか」で第十回林芙美子賞佳作を受賞。本作がデビュー作(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
シナモン
106
芥川賞受賞作。高名なゲーテ学者、博把統一は結婚記念日のディナーの席で紅茶のティーパックのタグに書かれた自分の知らないゲーテの名言に出合う。果たしてそれはゲーテの言葉なのか。そこから統一の名言探しの旅が始まる。古今東西、長い歴史を経て言い伝えられた名言は元を辿ればひとつに繋がる。それは現代においての「オリジナル」を生み出すことの難しさにも通じて。深く豊富な文学の知識に溢れる知性を感じる一冊でした。 2025/01/18
ヒロ
89
統一とゲーテ、読んでいて難しいと思う箇所もありましたが、それでも何か不思議な世界に誘い込まれるような新しい読書体験が出来ました。統一のキャラクターもどこか人間臭い部分も沢山あったし、その妻と娘もまた負けず劣らず濃いキャラクターだったと思います。ゲーテについてはほとんど知らなかったんですが、読んでまた興味も湧いたのでこれから色々と知っていきたいです。2025/02/02
ころこ
50
親が学者、子供が大学生、周囲にいる人々も大学に関係する人たち。果たしてそれで良いのだろうか。疑問を抱かせたのは同時受賞の作品だから、本作にはちょっと気の毒だ。職業作家も最近は大学の先生にならないと続けられないので、大学に近い文学者が多いのかも知れない。時として文学は学問とは相反するもののはず。師匠である妻の父の名前が芸亭(ウンテイ)なのだが、これはゲーテと読める。エーコ『薔薇の名前』がアリストテレスの架空の説という設定だったように読めたら良いが、飲み込むのに一杯だったら楽しめない。とはいえ、つっかえが無い2025/01/22
ぽてち
31
日本におけるゲーテ研究の第一人者とされる博把統一は、家族と行った食事会で自分の知らないゲーテの名言に出会う。その言葉は本当にゲーテのものなのか、出典はなにかを探る過程を縦軸に、彼の周りで起きる様々な出来事を絡めて話は進む。なにやら古臭く感じる文体で、登場人物たちがアカデミックな会話をしている。そんな印象。ドイツ語や英語もバンバン出てくる。こりゃあ無理かも……と思いながら、飽きることなく読み切った。2作目にしてこれはすごい。第172回芥川賞受賞作。2025/02/02
アマニョッキ
26
滑り込みで発表前に読了。最後はもう必死w(ちと自分には長かった) 自分は感覚で本を読むタイプなので、読みながらずっと小沢健二みたいな本だな(めちゃくちゃ褒めてる)と思っていたら途中小沢健二出てきたのであながち感覚も間違っていない様子。自分の頭があと8倍よかったらケラケラと笑いながら読める作品だと思う。とにかく知識量えぐいのでお幾つかと調べたら23歳ですって!素晴らしい!今回はなるほどTRIPPER掲載な作品だったので、次はもう少しひらけた作品を読みたいです。あと登場人物の名前も少し簡単にしてー読めないー。2025/01/15