出版社内容情報
育った家がごみ屋敷となり果て、久しぶりに戻った美佐。家を片づけていく過程で金庫を発見する。そこからひもとかれる、家族にさえ言えなかった叔母の秘密とは……。朝日新聞連載時から話題! 湊かなえが新たに挑む、先が読めない「介護ミステリ」。
内容説明
中学生の時に両親を事故でなくした美佐は、叔母に引き取られ、高校時代を山間部の田舎町で過ごす。それから約30年、叔母に認知症の症状が見られると役場から連絡があり、懐かしい故郷を訪れる。かつて、美しく丁寧に暮らしていた家はごみ屋敷と化していた。片付けを進めていくと、当時の恋人から借りた本を見つける。あったかもしれない未来をのぞき見するような思いで、本を返しに行った美佐は、衝撃的な場面を目撃する。担い手となった女性たちの心の声が響く介護ミステリ。
著者等紹介
湊かなえ[ミナトカナエ]
1973年、広島県生まれ。2007年、「聖職者」で小説推理新人賞を受賞。翌年、同作を収録する『告白』が「週刊文春ミステリーベスト10」で国内部門第1位に選出され、2009年には本屋大賞を受賞した。2012年「望郷、海の星」で日本推理作家協会賞短編部門、2016年『ユートピア』で山本周五郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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starbro
356
湊 かなえは、新作をコンスタントに読んでいる作家です。 本書は、著者の新境地でしょうか、 ノルウェイの森オマージュ介護ミステリでした。最高傑作「告白」の輝きから、どんどん遠ざかっているような気がします。 https://publications.asahi.com/feature/cstring/2025/03/11
さてさて
339
『私は知っている。人間が生きていくためには、汚いものや臭いものと切り離せないことを。誰かが「それ」を担わなければならないことを』。そんな言葉の先に、『認知症』と『ごみ屋敷』のリアルを見せてもいくこの作品。そこには、湊かなえさんらしく”ミステリ”にこだわる物語が描かれていました。後半の3章に登場する28日分の『日記』が謎解きに重要な役割を果たすこの作品。そんな『日記』に隠されたまさかの過去を見やるこの作品。湊かなえさんらしく、エンタメ要素も十分に加味された物語、ぐいぐい読ませる”介護ミステリ”な物語でした。2025/02/07
bunmei
262
老人介護の問題の中に、嫁姑関係の互いに歩み寄れない確執を織り込んだヒューマンタッチな作品。女性同士のドロドロした感情が交錯する中、『誰にも言えない過去』が記されたある日記と古い金庫、村上春樹の『ノルウェーの森』がキーアイテムとなって、世代を超えた男女の情念が絡み合う物語。前作『人間標本』とは真逆の内容に、著者の作家としての振り幅の広さを感じた。しかし、そこは湊作品。最後はしっかりとミステリーの世界観を漂わせ、それまでの流れを一気に覆すどんでん返しが待ち受ける展開は、ミステリーの女王としての期待は裏切らない2025/03/15
のぶ
226
湊さんの新刊は、介護ミステリーと言っていいのでしょうか。最初の章は介護の体験エッセイではないかと感じたけれど、読み進むにつれミステリー要素が出てきた。身近な家族の問題、ほんの僅かなすれ違いや誤解、小さな罪と罰。抱える物は人それぞれ違うけれど、誰でも何かしら抱えて生きている。金庫にしまった想い。忘れたい、忘れられない想い、記憶。自分も年老いた親の面倒を看たことはあるけれど、その時の体験も思い出しながら懐かしく読んだ。介護は大変、素人には無理、というのが個人の想い。2025/02/20
hirokun
221
★3 湊かなえさんは、「告白」「贖罪」といった作品で衝撃を受け、今回の作品も期待して読み始めたのだが、私の好みとはあまり相性の良くないものであった。介護、育児、家庭内における夫婦間の役割分担、家制度など現在社会においてもいまだ強固に残存する習慣をテーマに置きながら展開されていくストーリーは、興味をひくものではあったが何かすっきりとしない後味が残った。これが湊さんの作風であるのかもしれないが・・・ 表題に出てくるCについてはいろんなものが掛け合わされて表現されておりよく考えられている。2025/03/14