出版社内容情報
2020年大統領選で注目された激戦区ペンシルバニア州の小さな町ヨークに住み始めた記者がみたのは、お互いに交わらない人々。黒人と白人、貧富、共和党と民主党、都市と郊外。「分断」から「分離」へと深刻化したアメリカ社会の亀裂の理由を探る
内容説明
黒人と白人、貧富、民主党と共和党、都市と地方、草の根とエリート。大統領選や中間選挙の激戦州に住んだ記者が見たのは―。
目次
第1章 こちら側と向こう側(築一二〇年のタウンハウス;花火ではなく銃声 ほか)
第2章 「含まれない」人々(二つのファースト・フライデー;自分の町なのによそ者 ほか)
第3章 這い上がれない樽の底(安らかに眠れ;貧困の集中 ほか)
第4章 境界の向こうへ(境界の向こうへ;政治的「内戦」の景色 ほか)
第5章 「疎外」された人々の行方(Qアノンで目覚めた;同居人もQアノン信奉者 ほか)
著者等紹介
大島隆[オオシマタカシ]
1972年、新潟県生まれ。朝日新聞政治部記者、テレビ東京ニューヨーク支局記者、朝日新聞ワシントン特派員などを経て、現在は英語ニュースサイト「The Asahi Shimbun Asia&Japan Watch」のデスク。この間ハーバード大学ニーマン・フェロー、同大ケネディ行政大学院修了(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kan
22
アメリカの今がわかる丁寧なレポート。そもそも国家建設の時点で分断があり、なお続く人種差別、ヒスパニック移民の増加と大都市からの流入で新しい分断が生まれ、アッパーミドルとの格差拡大、エスタブリッシュメントへの反発、そこにCOVIDで社会不安から陰謀論が加わる。難度の高い国だと改めて思う。市井の人と関係性を育てながら取材していく著者の姿勢に好感をもった。トランプ勝利の時に同じ州のフィラデルフィアに住んでいたが、都市の文化に包まれ郊外の空気を理解していなかったと改めて気付かされ、アメリカ理解の助けとなった。2023/01/31
lovemys
11
アメリカの分断具合と差別の酷さがよく分かる。誰もが納得するような政策はなかなか出来ないのも分かるけど、反対意見にも理解を示しつつ丁寧な政策をやっていって欲しいと思う。同じ国なんだから仲良くやろーよ! と思うけど、難しいのかね。だいたい、貧富の差や地域差があり過ぎて、価値観がだいぶ違っちゃう。トランプさんを支持する人の気持も分かったし、民主党の政策に理解を示す人たちは余裕がある人たちなのだとも思う。大きな国で、色々な人種がいて、価値観も宗教も様々だと難しいね。分断ではなく、Unitedして欲しいです。 2023/09/23
kuroma831
8
コロナ禍でリモート勤務になったワシントン特派員の新聞記者が、地方都市ヨークに部屋を借りて住み、人種や貧富、支持政党の差などを調査したルポ。民主党支持のマイノリティの貧困層が多いインナーシティと、共和党支持の白人富裕層の住む郊外の、ちょうど境界線上にあるタウンハウスに住むという企画が面白い。ブロックを一つ跨いだだけで歩行者の人種も変わり、疎外感を感じて足を踏み入れられないような、セグリケーションの進んだ街とはここまでなのか、というのは実際に住んだ人間のレポートだからこそ伝わる。非常に面白く読めた。2023/08/20
お抹茶
4
ヨークのインナーシティーである市街地に部屋を借り,貧富の差や人種の差や支持政党の違いを肌で実感した記者のルポ。生活者の視点と観察者の視点が適度なバランスで入っていて,インナーシティーと郊外が地理的には近くても感覚的には別の領域ということがよく伝わってきた。お互いがわかりあえず交わろうともしない実態や背景をインタビューから明かし,特に警察への支持/不支持の根深い断絶は歴史的背景まで遡って論じている。舞台はヨークという一地方都市であるものの,数あるアメリカ国内の「断絶」例として興味深い。文章も読みやすい。2023/01/15
蘇我クラフト
3
かなり良いルポ。住宅街の緑の多さは所得と比例するという言葉、その通りだと思う。富裕層は郊外に出て緑に囲まれながら生活し、低所得層は緑の見えない建物の乱立した場所で暮らす。バイデン政権になる前の選挙に見るヨークの人々、隔離されたそれぞれの住民と分かり合えない理由などを境に住むことで日本人が理解していくのは非常に興味深い。そしてこれが私たちの夢見るアメリカの実情であると考えると非常に興味深い アメリカに住む人間としてかなり頷ける部分が多かった2024/11/23