出版社内容情報
バブル期に、個人として史上最高額4300億円の負債を抱え、自己破産した朝比奈ハル。「北浜の魔女」と呼ばれた彼女は、平成が終わる年にひっそりと獄死した。和歌山の寒村で生まれ育ったハルは、いかにしてのし上がっていったのか、彼女は果たしてどんな人物だったのか。その生涯を小説に書こうと決めた“私”は、生前の彼女を知る関係者に聞き取りを始める。
終戦、バブル崩壊、コロナ禍……。それまでの日常が、決定的に変わってしまうとき、この日本社会に生きる人々はどう振舞ってきたのか。
「小説トリッパー」二〇一九年夏号から二〇二〇年春号の連載を、大幅に加筆修正。注目の著者による勝負作。
内容説明
個人として史上最高額となる4300億円の負債を抱え、自己破産した朝比奈ハル。「北浜の魔女」と呼ばれた彼女は、平成が終わる年にひっそりと獄死した。昭和8年に和歌山の寒村に生まれたハルは、いかにして巨額のマネーゲームに身を投じるようになったのか。その生額を小説に書こうと決めた“私”は、生前の彼女を知る関係者に聞き取りを始める。
著者等紹介
葉真中顕[ハマナカアキ]
1976年東京都生まれ。2013年『ロスト・ケア』で日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞し、作家デビュー。2019年『凍てつく太陽』で大藪春彦賞および日本推理作家協会賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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starbro
347
葉真中 顕は、新作をコンスタントに読んでいる作家です。本書は、著者が尾上縫をモデルに書いたバブル小説でした。 https://news.yahoo.co.jp/articles/e113b1b5b677f9051c435a5d6f28fbf5a36e7419 最近バブルをテーマに書く作家が増えていますが、それだけ魅力的なのでしょうか?私は、バブル後半世代と言われています(笑)2020/12/11
ウッディ
263
バブル期に巨額の富を得ながら、詐欺と殺人の罪で捕まり獄中死した朝比奈ハル、北浜の魔女と呼ばれた彼女の人生を小説にするため関係者へのインタビューから明らかになった真実とは?戦争、バブル崩壊そしてコロナ禍、最初の楽観から 最悪のシナリオへと転がっていくという共通点、そんな時代の大波に翻弄されながら、一人の女性が、自立してワガママに生きるため犯した罪とは何だったのかと考えさせられた。ウミウシ様の正体は予想できたが、巧妙な伏線回収やどんでん返しも含め、ミステリーとしても面白く、上手い構成でした。2021/05/02
utinopoti27
225
平成の終わりにひっそりと獄死した老女がいた。戦後の混乱期を生き抜き、バブルに乗じて築いた財産を全て失ったあげく、4,300億円もの負債を抱え、殺人まで犯した女・朝比奈ハル。本作は、彼女の数奇な人生を、関係者たちへのインタビュー形式で浮き彫りにしてゆく趣向だ。何者にも縛られない絶対的な自由【ワガママ】を得るために、異常なほど金に執着する彼女。話が進むにつれ、徐々に膨れ上がる違和感。「わたし」とは誰なのか・・。隠された真実が明らかになる時、開けた視界の先に広がる景色に言葉を失う。衝撃のミステリを堪能して欲しい2021/02/18
パトラッシュ
225
敗戦とバブルという昭和の二大クラッシュに人生を翻弄させられた朝比奈ハルという女の一代記として、山崎豊子か黒岩重吾風に書いていたらもっと面白かったのに。無理に殺人事件を絡めようとしたため、かえってミステリとしては尻切れトンボに終わった。関係者のインタビューを集めた形も物語を平板にしており、通常のスタイルでぐいぐい押していけば劇的な迫力が出たのでは。要するに極上の食材を腕の悪い板前が調理したおかげで、平凡な定食になってしまったのだ。バルザックかゾラがシェフだったら最高の料理になったのにと嘆息するのは私だけか。2021/02/08
いつでも母さん
224
自粛なんて贅沢なんですーこの言葉が胸に迫る今のコロナ禍とバブル経済を上手く絡めて葉真中さんの新作。『道徳に縛られず、欲望を肯定し、何人も人を殺して、ワガママに自由に生きたはずの人が幸せじゃなかったなんて』朝比奈ハルの人生を通して【幸せ】って何だろうと考えさせられるのは陽菜だけじゃないはず。私はこうして新作を読める状況に居ることだけでも十分に幸せだと感じているが・・今回うみうし様の正体は途中でなんとなく、やっぱりなぁだったが、あなたがあの人だったとは・・私はまだまだだと感じて読了に至る。2020/11/24