出版社内容情報
15歳の少女、翡翠命は王家の血が流れている自分の命を狙う天孫を名乗る御真木の存在を知り、隠れ里を逃げ出す。西へと向かう彼女が目にしたのはもがき苦しむ人々の姿だった──。20代の若き才能が新しい「卑弥呼」を描き切る。
内容説明
弥生時代、登美毘古が大王に即位して二十年、泰平の世が続いていたある日、実弟・安日彦が変わり果てた姿となり戻ってきた。その夜、矢の雨が長髄の邑を覆い、村人を襲った。敵は「天孫」を称する二十歳の御真木だった。大陸を祖国とする御真木は、この地を征伐し、新たな国を創ろうと殺戮を繰り返していた。登美毘古には一人娘がいた。その名は翡翠命、十五歳。薬師である老人・左慈と共に山奥で暮らす。御真木の悪辣ぶりは隠れ里まで届き、翡翠命は自らの宿命を受け入れ、御真木と対峙する。新しい国王になるため、古い王家の血を絶やすべく、自らの力を過信し殺戮を繰り返す男と、己の弱さを知るが故に弱き者を救い、均しく包摂する少女。王を巡る壮大な物語が今、始まる。
著者等紹介
森山光太郎[モリヤマコウタロウ]
1991年熊本県生まれ。2015年立命館大学法学部卒業。幼少期より、大伯父から歴史の手ほどきを受ける。2018年、『火神子 天孫に抗いし者』で第十回朝日時代小説大賞を受賞し、デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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はじめさん
26
やった、読メレビュー1番乗り!第10回朝日時代小説大賞にしてデビュー作。 弥生時代、大陸に祖をもつ天孫・御真木の軍勢により滅ぼされた王族。正統なる支配者が外部からの侵略者では風体が悪いーー古くからいる現住民は一族の歴史を捨て恭順せねば、全員葬られる。王族の娘、翡翠は賢老をして、治世に長けた王者でも、武力に長けた覇者でもないーーそれらを束ねる「覇王」といわしめる。天孫が支配する大和から、30年も小国の内乱が続くという修羅の国・倭(九州)への逃避行。/ 邪馬台=大和対抗だったのか! これぞ日本のキングダム!2019/06/02
rosetta
19
★★★☆☆第10回朝日時代小説大賞。27歳の受賞は最年少とか。そりゃ時代小説なんて爺さんの読む物だもんね。歴史小説ではなく時代小説。この本は更に上を行く、もはやファンタジーと言ってもいいかも。匈奴に追われ大陸から佐渡、出羽と移ってきたミマキイリヒコは長髄を滅ぼし大和に纒向の都を築き、最初に神武、後に改名して崇神と名乗る。長髄の王登美毘古の娘翡翠命は父をも凌ぐカリスマを持ちながら鏖を生き延び西に落ちる。大陸から倭国と呼ばれる大乱の続く九州に渡り後に卑弥呼となる。しかし物語は翡翠が卑弥呼になる決心をした所まで2019/08/14
にゃも
18
面白い!長髄を制圧し次第に勢力を伸ばす「天孫」であり「神武」であり「崇神」でもある御真木と、長髄の大王の娘であり秘めた力を持ちながらも今はまだ死に怯え追ってから逃れるのが精いっぱいの少女・翡翠命。ラストで漸く翡翠命覚醒!なんと、続編があるとは…早く図書館に行かねばと気持ちがはやる。神武東征と卑弥呼を絡めているところや、勝者の視点からの古事記や日本書紀と外からの視点の魏志倭人伝を意識せざるを得ないところなど、小説とはいえ「そんな見方もあったか!」と、とても興味深くワクワクする。2023/07/11
らむり
11
★★☆☆☆2019/06/27
blue sea
7
この時代の本は実は2冊目なのですが、史実とフィクションが上手く融合してたいへん面白かった。 古い時代のことなので資料が圧倒的に少ない分、歴史ロマンとして読み応えありました。2019/07/20