魂の秘境から

電子版価格
¥1,799
  • 電書あり

魂の秘境から

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ B6判/ページ数 236p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784022515506
  • NDC分類 914.6
  • Cコード C0095

出版社内容情報

むかしの田園では、大地と空はひとつの息でつながっていた。追悼。 不知火海・水俣の記憶、熊本大地震。――回想と幻視で綴る、朝日新聞連載の著者最晩年の肉声。

内容説明

現世での生きづらさ、生命の根源的な孤独。世界的文学『苦海浄土』の著者による、水俣・不知火海の風景の記憶と幻視の光景。朝日新聞に3年にわたり連載された著者最晩年の肉声。

目次

少年
会社運動会
湯船温泉
避病院
石の物語
アコウの蟹の子
水におぼれた記憶
紅太郎人形
雲の上の蛙
海底の道〔ほか〕

著者等紹介

石牟礼道子[イシムレミチコ]
1927年3月11日、熊本県天草郡宮野河内(現・天草市)生まれ。まもなく水俣町へ移る。水俣実務学校卒業後、小学校代用教員を経て結婚。家事の傍ら詩歌を作りはじめ、58年、谷川雁らが結成した「サークル村」に参加、本格的に文学活動を開始。69年に『苦海浄土 わが水俣病』を刊行、70年に同作が第一回大宅壮一賞に選ばれるものの、受賞辞退。73年、マグサイサイ賞受賞。93年、『十六夜橋』で紫式部文学賞受賞。2002年、朝日賞受賞、また新作能「不知火」上演。03年『はにかみの国―石牟礼道子全詩集』で芸術選奨文部科学大臣賞受賞。2018年2月10日、熊本市にて逝去。享年90(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

この商品が入っている本棚

1 ~ 1件/全1件

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

みねたか@

33
亡くなる前月まで朝日新聞に連載されたエッセイ。少女時代,大地と空は1つの息でつながっていて妖怪の棲む異界との境界もあやふやな神秘的な世界があった。やがて海岸線を覆う排出物,水鳥や貝たちの死,狂い死にする猫などチッソの姿は不気味に影をおとしていく。暖かい家庭しかし厳しさ辛さも味わう中,少女はドンベコス・琵琶ひきなど境界を生きる者たちの姿に惹かれ,「魂の遠ざれきをする」漂泊者としての自己を形成していく。老境の作家の語りは,夢とうつつが混ざり合う静謐な夢幻世界。美しくかつ凛とした厳しさも感じさせる極上の一冊。2019/07/03

抹茶モナカ

33
朝日新聞で不定期連載していた口述筆記のエッセイ。亡くなる一ヶ月前くらいのものもあるので、本当に遺作となる作品。水俣の風景写真を挟みながら、大きな活字で1冊の本の形に仕上げられていて、読みやすく、それでいて文学的な空気もある。大江健三郎さんと似た空気を感じたのは、大江作品によく登場する土地の神話を語る老婆の語り口に似た物語を語る時の姿勢のせいだろうか。熊本地震の事も語られ、「本当に同時代に生きていた作家だったんだな。」と、思った。年老いる事についても、静かな気持ちで考え、「魂の深い人間」という表現に憧れた。2018/08/01

シュシュ

31
朝日新聞に連載した石牟礼さんののエッセイ。モノクロの写真とともに、石牟礼さんの幼い頃の話や家族の話や水俣の風景が描かれていて面白かった。『我が家にビートルズ』は、息子さんと石牟礼さんが微笑ましかった。息子さんの勉強を邪魔したくてくすぐる石牟礼さん。のんびりした感じがとてもいいなあと思う。『少年』『水におぼれた記憶』『女の手仕事』『石の神様』もよかった。また時々読み返したい。 2018/07/26

くまさん

27
まず物凄い題名である。そこがユートピアでなく実在する場所であることを、芥川仁さんの写真が教えてくれる。椿の蜜の美しい描写や「生命が海から陸へと上がりかけた」ままのようなアコウの巨樹の景色が目に焼きつく。文章を書くことの意味、世界への原初的な目ざめ、「自分の中から沸き上がる「あこがれ」」を心に留める著者は、自分を勘定に入れず、秋の夕暮れに〈風の色〉が変わる瞬間も逃すことなく、この世界の果てまで見つめようとしているかのようだ。この呼応の空間は著者がまだ生きていることを証し立てている。心のよりどころとなる書物。2019/01/05

algon

17
著者が逝去する10日前までの新聞連載エッセイをまとめた遺作の本。31篇からなるエッセイだが雑駁に言うならおおむね幼少期に由来する体験を老境に至って回顧、その長きにわたった体験の熟成を吐露したエッセイ、と理解した。渚での賜りものの貝類、それらを調理する手仕事、著者独特の魂の漂浪(されき)も周囲の心遣いと相まって読ませてくれた。語られるエピソードは著作や自伝などで馴染みのものだがしかし幼少期体験が著者程の人間にしてもこれほど大きいものかと改めて認識させられる。多くの写真、特に瘦せ細った手は愛おしいものだった。2022/03/31

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/12797761
  • ご注意事項