出版社内容情報
妻を亡くした独居老人と介護する息子夫婦。老いへのはかりしれなさ、戸惑いながらの介護の先に辿り着ける境地とは?
内容説明
老い衰える不安をかかえる老人、介護の負担でつぶれそうな家族。地獄のような日々から、やっとひと筋見えてきた親と子の幸せとは…。
著者等紹介
久坂部羊[クサカベヨウ]
1955年大阪府生まれ。医師、作家。大阪大学医学部卒。二十代で同人誌「VIKING」に参加。外務省の医務官として9年間海外で勤務した後、高齢者を対象とした在宅訪問診療に従事していた。2003年、老人の麻痺した四肢を切り落とす医師が登場する『廃用身』で作家デビュー。2004年、『破裂』で大学病院の実態を克明に描き、超高齢社会の究極の解決法をさぐる医療小説で注目された。2014年、『悪医』で第3回日本医療小説大賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yoshida
294
誰でも患う可能性のある認知症。本作では78歳の幸造が徐々に認知症を患う過程と、息子夫婦の介護への取組みが描かれている。この作品を読むと認知症とそれにより起こりうる様々な事象を知ることができる。また、認知症を患う本人の悩みや焦り、悲しみや絶望が痛いほど伝わる。さらに家族の戸惑いや介護の悩み、経済的な苦しみ等を知る。久坂部羊さんの医師としての経験が活きている。残念だが現在の医療で認知症は治らない。和気医師からのアドバイスが作中の大きな転機かつ、実務的なヒントと思う。認知症について知ることができる貴重な作品。2017/10/07
青乃108号
237
【悪医】で衝撃を受けてからのこの本。終盤まで、義父の認知症に対する嫁さんの悲観的考えや先読みし過ぎの行動に、受け入れ難いものをずっと感じながら読み進める。家に帰って毎日、こんな風に嫁さんからやり込められる旦那さんが気の毒だ。俺だったら家に帰るのが嫌になるな。その点、俺の嫁さんは俺の父親が亡くなるまで、嫌な顔する事もなく文句も言わず献身的に尽くしてくれた。なんて出来た嫁さんなんだろう。などと、レビューが思わず自分語りになってしまう程、小説としてのインパクトは弱い。介護入門の実用書として書けば良かった。 2022/08/17
ナイスネイチャ
223
図書館本。なんか悲しくなってしまう作品。両親が認知症になるのも自分自身がなるのも悲しく感じる。それを受け入れる気構えがあるだろうか?物凄く考えさせられる作品でした。2017/02/28
いつでも母さん
200
父親(舅)が認知症を発症する直前からその後の様子を息子夫婦の眼を通しての諸々・・ん~ん、参ったなぁ。今、私にこれを読ませる久坂部羊が憎い。自分が老い道をまっしぐらだというのに、認知症に片足を突っ込んでいる親を目の当たりにしているから、ぐいぐい・ドキドキしながらの読了になった。ホント現実問題なのだ。0から100へと完全に呆けるのでは無いから本人も周りも哀しいんだ。認知症を受け入れる事がどれだけ難しいか・・終わりが見えないから尚更だ。だれもが老いる。抗いたいのじゃ無い。私の時はすぐに逝かせてと願うばかりだ。2016/11/28
🐾Yoko Omoto🐾
196
老齢の父親に認知症の疑いを持ち心配と不安に苛まれる家族、子供に迷惑をかけたくないと虚勢を張る当人。双方の目線から描かれる痴呆と介護の現実は、火災や事故など本人のみならず他人を巻き込むことへの懸念、介護費用や時間の捻出など介護する側の不安や、自身の行動を徐々に把握出来なくなっていく現実に為す術のない介護される側の恐怖など、切実な問題に溢れ、今後どちらの立場にもなりうる自分にとって、非常に考えさせられる作品だった。子供が親の面倒を見るのは当然のこと、心情的には勿論そうだが、言うは易し行うは難しもまた現実だ。2017/05/07