出版社内容情報
【文学/日本文学小説】同心の夫を亡くしたうめは、堅苦しい武家の生活から抜け出して気ままな一人暮らしをはじめた。ところが甥っ子に隠し子がいることが露見し大騒動となり、ひと肌脱ぐことに……。2015年に急逝した著者の遺作となる長編時代小説。笑いと涙に満ちあふれた作品。
内容説明
僅かな月日でも好きなように生きられたら―。北町奉行所同心の夫を亡くした商家出のうめは、気ままな独り暮らしを楽しもうとしていた矢先、甥っ子の隠し子騒動に巻き込まれ、ひと肌脱ぐことを決意するのだが…。笑って泣いて―“遺作”に込められた家族愛、そして夫婦愛の物語。最後の長編時代小説。
著者等紹介
宇江佐真理[ウエザマリ]
1949年生まれ。1995年に「幻の声」でオール讀物新人賞受賞にてデビュー。同作品を含んだ連作集『幻の声―髪結い伊三次捕物余話』は直木賞候補にもなり注目される。2000年に『深川恋物語』で吉川英治文学新人賞、2001年に『余寒の雪』で中山義秀文学賞を受賞。2015年11月7日、逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
120
病を得ながら執筆されていたのだなぁと、一字一句想いを受け止めるべく真摯に読了。と言いたいところだが、そこは宇江佐さん!ぐいぐいと一気に読ませる読ませる。うめの言葉に宇江佐さんの気持ちが込められているのだろうと思うと嬉しくも楽しくも悔しくもあるのだ。そして、諸田さんの解説が良い。嗚呼、本当にお仕舞なんですね。これからもう一山ってところで未完の今作を含め、たくさんの作品を残して下さって感謝です。この先何度も再読させてもらいます。未完のあれやこれやは勝手にその先の想像もさせてもらいます。「いっち好き。」ー感謝ー2016/04/18
ふう
101
新聞小説で読了。一日分が通常の数日分あるかと思える長さで、切り取って折って張り合わせると、A4版ほどの作品ができました。 夫に先立たれたうめが、子どもたちと暮らす家を出て、一人で暮らし始めます。「涙堂」にもそんな話があったような記憶があります。武家の暮らしを捨て、一人の女性として人間として生きていこうとするうめ。立場に縛られず、生きたいように生きて、と余命を知った宇江佐さんが語りかけているようでした。それでも、周りの人のために体を壊すほど関わっていく心意気が、生きるための知恵や機微を教えてくれます。2016/03/21
じいじ
98
急逝した夫を偲ぶ、うめの想いが語られる冒頭の数行でガツンと打ちのめされました。夫亡き後、四人の子供たちを一本立ちさせて、旧来の夢だったうめの一人暮らしが幕をあげる。時に48歳。勝気で情にもろく、ちょっと短気なところが可笑しくて可愛いうめ婆です。ホッと一息つくと、もっと夫に優しく接してあげればよかった、と悔いの言葉が…。折にふれて夫の顔が目に浮かぶうめ婆の心の温かさが垣間見えます。仄々とした家族への思い遣り、夫婦愛が丁寧に描かれた宇江佐さんの《遺作》を存分に堪能させていただきました。続きが読みたかった。2016/07/24
Shinji Hyodo
95
相変わらず味のある表紙絵。でも、もう少しうめ婆を可愛く描いてくれたら良かったのに…宇江佐さんはこの絵を見る事が出来たのだろうか?まさに、遺作となった『うめ婆行状記』最後のエピソードには〈未完〉の二文字が打たれている。苦しい病との闘いの中で書かれたと知れば、どの章も疎かには読めない。あぁ何で読んじまったかなぁ〜宇江佐さんの未読の作品まだまだ沢山有るのになぁ…遺作を読むのはもっと先で良かったのに…。改めて宇江佐さんのご冥福をお祈りした私でした。2016/12/25
ぶんこ
75
待ちに待ってようやく宇江佐さんの遺作を読む事が出来て感無量です。夫に先立たれて、初めての一人暮らしを思い立ったうめ。一人で気ままに過ごすはずが、実家の甥の隠し子騒動、実家の義姉の錯乱、盂蘭盆、甥の結婚、お隣さんのお弔いと続き、うめさん本人も倒れてしまう。どうやら回復して、さあ、これからどうするのか? 長男のところに戻るのか、小商いをするのか?思ったことをズバズバという裏表のない明るいうめさんの、下町の大店の娘らしい気風の良さと大らかさが素敵で、爽やかだっただけに、続編を読めないのが無念です。2016/12/12
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