出版社内容情報
目も見えず、耳も聞こえない「盲ろう者」でありながら昨秋、東大教授となった福島智氏。9歳で失明してから、18歳で耳が聞こえなくなり、「指点字」という独自の会話法を編み出すまでの苦難の日々を、母親である令子さんが初めて綴った感動の子育て、闘病記。
内容説明
九歳で失明、十八歳で失聴した東大教授・福島智氏の母が綴る子育て記。
目次
第1章 長いながい旅路の始まり
第2章 右目摘出、そして幼稚園へ
第3章 小学校入学
第4章 失明
第5章 盲学校へ
第6章 東京の盲学校へ
第7章 聴力低下
第8章 どん底
第9章 指点字
著者等紹介
福島令子[フクシマレイコ]
昭和8年(1933)静岡県生まれ。昭和16年に中国・青島に渡り、終戦の前年に帰国。病気療養のため、京都府立福知山高等学校普通科を2年で中退し、その後、福知山文化服装学院に入学。洋裁の初級教員免許を取得。昭和30年(1955)5月に結婚。昭和37年に三男の智氏を出産。智氏の闘病生活を支える日々が始まる。平成8年(1996)、智氏とともに「重複障害を持ちながら、自立の為に、母子一体となって尽力する姿は、多くの人々に生きる勇気を与えている」とし、吉川英治文化賞を受賞。現在は講演活動なども行っている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぶんこ
43
両目の視力を失う9歳までの智さんのヤンチャぶり、この明るさが失われなかったのがすごい。また、母である玲子さんも明るかった。親が悪い方にばかりにしか考えられない人だったらと思うと、智さんラッキーといえるでしょう。目が見えなくなっても、音楽を楽しみ、オルガン、トランペット、ピアノ、ギター!才能豊かで驚きました。母が留守がちの福島家。父と2人のお兄さんの頑張りにもうるっときました。この父、兄がいてこその智さん、おかあさんの今があるのでしょう。智さんが東大教授になられるまでのご本人の努力を想像すると感慨深いです。2024/05/13
糸車
30
通訳さんの手が福島さんの手を包むように置かれ、指がタイプライターを打つように動いた。耳が不自由とは思えないほどなめらかにお話をされる福島さんをeテレで拝見した。幼い頃から病気と闘う智さんにはいつも側にいてくれる母と我慢強い2人の兄と熱血教師の父がいらしたのですね。辛い治療の甲斐もなく数々の落胆があっただろうに淡々と綴られる母令子さんの文章にじわじわ涙が出てきて止まらなくなる。視力だけでなく 聴力も奪われる智さんに語りかけようと令子さんが指に打った点字。さとしわかるか。指点字はこうやって生まれたのですね。2017/07/08
ライアン
16
盲ろう者で東大教授の福島智さんのお母様の手記。昔のことをよく覚えてるな~と。お母さんの努力が垣間見れますね。作った指点字で智さんがどれだけ救われたか。智さんの前向きでバイタリティ溢れる姿が良かったです。2019/04/26
ひさちゃん
9
もうすぐこの本を原作とした映画が上映される。その予告を見て読みたいと手にした。筆者は、右目の失明から左目失明・両耳の失聴と、重複障がいをもつことになった息子の母親。病気が進行し、見えなくなる、聞こえなくなる息子を支える日々は、どれほど悩み苦しく迷う日々だっただろう。その辛さや苦しさを追体験したからこそ、「指点字」によってコミュニケーションがとれにくくなった息子と通い合えた瞬間の「さとしわかるか」という言葉に、胸が熱くなった。障がいの有無に関わらず、子育てに関わる多くの保護者等を励ましてくれる本だと思う。2022/11/05
小豆姫
9
全盲ろう者として初めて東大教授となった福島智さんのお母様の手記。「さとし わかるか」 「ああ、わかるで」 … 光が満ちるこのシーンは、何度読んでも胸を打つ。幼い頃からの辛い闘病生活、母と子の二人三脚の苦闘の日々が結実した瞬間。母親の愛が『指点字』を生み出し、新たなるコミュニケーションの扉を開いたのだ。この母にしてこの子あり。どんな過酷な運命をも肯定的に受けとめる強さと明るさに感服。2017/10/08