感想・レビュー
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roughfractus02
9
ユダヤ教からイスラム教に改宗した父を持ち、サウジアラビアに生まれてインドに移住し、長じて米英の大学で人類学を学び、スーダンで大学の教えつつ当地を調査する。そんな経歴を持つ著者には、近代西洋の植民地主義が異文化理解のために創出した人類学自身の異文化性が問題となる。本書は人類学に潜在する普遍主義をキリスト教の権力史の中に見出し、中世の訓練としての儀礼が制度化されて象徴的行為となり、宗教が象徴システムへ変容する系譜を作図する。最終章ではラシュディ『悪魔の詩』に英中産階級が期待する宗教という政治的文脈も指摘する。2024/04/28