感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
8
新プラトン主義を通してプラトン的恋愛を神への愛に据えたイスラム的恋愛は、西洋哲学の枠組みをはみ出していく。哲学的理性の観想も届かない唯一神を感情によって幻想するその愛は、原因の増減に左右される現世的な愛(家族の愛、友愛、欲望の愛、恩恵に基づく愛、秘密を分け合う愛等)と区別され、魂の合一を求める高貴な愛とされる。著者は夢に出てくる実在しない女性に恋する男の物語を崇高な愛への入口と見る。が、格調高い七五調で訳された本書には、むしろ崇高な神への愛が潜在するはずの現世的愛の方が生き生きと描かれているように思える。2022/10/24
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- 和書
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