出版社内容情報
機会すら平等に与えられない“新たな階級社会の現出”を粘り強い取材で明らかにした衝撃の著作。その後を追跡・分析した新章を追加。
内容説明
強者の信奉する「市場原理」が、教育、育児、介護など、効率性・生産性とは異なる価値観をもつ領域にまで侵食するとき、社会はどうなってしまうのか。格差拡大をむしろ積極的に進めるような流れが、「構造改革」の名の下に強まるばかりでよいのか。真に自由な人間とは何かを問いつづけた著者が、粘り強い現場取材をもとにいち早く警鐘を強く鳴らしたルポ。最新事情を踏まえた新稿を序章としたほか、森永卓郎氏と行った対談を巻末に掲載。
目次
第1章 「ゆとり教育」と「階層化社会」
第2章 派遣OLはなぜセクハラを我慢するか
第3章 労組はあなたを守ってくれない
第4章 市場化される老人と子供
第5章 優生学の復権と機会不平等
著者等紹介
斎藤貴男[サイトウタカオ]
1958年東京生まれ。ジャーナリスト。早稲田大学商学部卒業。英国バーミンガム大学修士(国際学MA)。新聞記者、月刊誌編集者、週刊誌記者を経てフリー。『「東京電力」研究 排除の系譜』(講談社、角川文庫)で第三回いける本大賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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壱萬参仟縁
41
教育基本法第10条と、教育を警察に近い権能と見なす発想も強烈(102頁)。私は、社会科研究室に居た時、確か、万引きなどの問題行動の生徒が、ベテラン教師からの「取り調べ」を受けていたのを知っている。これは、その生徒のためになるのだろうか? 社会人となったら、警察で同じ取り調べを受けるだけで、矯正しないのではないか? 勤務先任せの納税システムが徹底している先進国は日本以外に存在しない(174頁)。社会ダーウィニストが最も憎むのは、平等や公平の思想である。2017/09/03
makio37
9
"劣っている"と判断された子供は積極的に無知で"実直な"人間に育て、浮いた労力で少数のエリートを伸ばす。それが「"ゆとり教育"の本当の目的」とその元責任者が語るのには驚いた。また、日経連が導入を呼びかけたとある"雇用ポートフォリオ"の考え方は、今まさに自分の会社でも現実化していると感じる。"機会不平等主義者"たちは「グローバリズム」や"世界市場の中での競争"というレトリックで自らの欲望を正当化している、とある。労組の委員長の発想も彼らとあまり違いはないようだ。他者の心と境遇に対する想像力は失わずにいたい。2018/10/07
YNR
1
階層化される社会。派遣、介護、教育、育児など各章があり、興味深い。東京医大問題然り、最近、こういった機械の不平等は社会的注目を浴びている。2019/01/16
hal
1
最初に出版されたのは2000年だが、現在からみても問題設定の方向性に違和感は無い。巻末2016年の対談とのつながりもスムーズ。著者が危惧した方向へ、この社会は突き進んできているように思える。上記対談では“精神”が最後の砦だと著者と森永卓郎が話しているが、そこに体制が手を突っ込もうとする法律が成立しようとしている。全体に“カタイ”感じがするのは本の性格上仕方ないか?ドキュメンタリーの部分は迫力あり。2017/03/14
huyukawa
1
意見が定まった人のレポートは読みにくいことが多い。特に自分と違う意見のものは。ただ、本書は考えさせられることが多くあった。本書の文献や分野を掘り下げるために自分でも調べたい。特に遺伝の話など。最近は遺伝よりエピジェネティックなものの方が話題としてはホットだ。こちらの方がより先に格差につながると考える。また、平等についてもいくつか考えた。平等の軸を設けてあまりにもひどくかけ離れた格差を論じていかないと現実的ではないように考える。2017/03/07