出版社内容情報
水俣病公式確認から五〇年。人類の負の遺産「水俣」を将来に活かすべく水俣学を提唱した著者が、様々な出会いの中に見出した希望の原点とは。
内容説明
有機水銀中毒「水俣病」の公式確認から六〇年が過ぎた。今もなお環境汚染、原発事故、薬害禍など、命と尊厳を脅かす深刻な問題が世界各地で跡を絶たない。人類の負の遺産としての「水俣」をあらゆる角度から捉えなおし将来に活かすべく、水俣学を提唱した原田正純医師(一九三四‐二〇一二)が、様々な現場を歩き、人びとと出会う中で、希望の原点を探った思索と行動の記録。
目次
第1章 「水俣学」の原像(「水俣学」事始め;わたしの原風景 ほか)
第2章 忘れ得ぬ人びと(水俣を見つめ続けて;生命のみなもと ほか)
第3章 地球を蝕む水銀汚染(国際学会デビュー;第一回国連人間環境会議 ほか)
第4章 繰り返される過誤(足尾鉱毒;非命の死者 ほか)
第5章 希望の世紀めざして(薬害エイズ判決;ハンセン病判決 ほか)
著者等紹介
原田正純[ハラダマサズミ]
1934‐2012年。熊本大学医学部卒業。熊本大学大学院医学研究科(神経精神医学)修了。胎児性水俣病の研究により医学博士号を取得。熊本大学助教授を経て、1999年熊本学園大学教授。著書に『水俣が映す世界』(日本評論社、第一六回大佛次郎賞)など。「水俣学」の提唱と深化により第三五回吉川英治文化賞、2010年度朝日賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ochatomo
17
「水俣の赤い海」が子ども向けとしたらこの本は大人向けといえる紹介本 新聞に連載したものに手を加えたとのことで、簡潔でわかりやすいエッセイ集 巻末解説の花田昌宣氏によると『患者に学ぶ、住民に学ぶだけでなく、その成果を地元へ返していくことが大切だと力説されていた』 おすすめ 元本2002年 2016刊2019/07/20
Ikuto Nagura
6
エッセイなのに、怒りと自己嫌悪で涙が溢れてくる。「水俣病に映してみると世の中のさまざまなことが見えてくる。この国のしくみや政治、経済、学問の在りよう、そしてわたしたちの生きざままで残酷に映し出してくれる」と水俣学を提唱する原田正純。同様のことは石牟礼道子も『苦海浄土』で述べていた。水俣病という明らかな殺人と傷害を眼前にして、救済も責任追及も行えない民主主義とは何だろう。弱者を殺して利益を得る経済とは何だろう。しかし自分もまた、無意識に殺人者と差別者に加担してきたわけだ。たまたま殺されなかっただけなのに…。2016/04/25
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