出版社内容情報
急速に規格化・商品化が進む近代社会の軌跡と重なる「家事労働からの解放」の夢。家庭という空間と国家、性差などとの関わりを読む。
内容説明
家事は労働なのか、それとも生活なのか。合理化、普遍化を求めた家事の近代化=「改善」の夢は、急速に規格化・商品化が進んだ社会の軌跡と重なる。家政学者や建築家、政治家たちの言動を読み解き、国家、性差、貧富やさまざまな「権力」と家庭という空間がいかに関わっているかを明らかにした、今なお斬新な社会史であり精神誌である。
目次
キッチンのない住宅
天使たちの機械住宅
貧困な都市生活者に規格化された料理を
国家につながる家政学―明治の日本家政学
商品世界に発見された家事
家事はロボットにおまかせ
主婦の労働機械―トイツの家事合理化
家事の改善をめざして―両大戦間の日本の家事
家庭という戦場―戦時下の家事
量産戸建て住宅と生活モデルの喪失
ミクロポリティックスとしての家事
未完の家政学プロジェクト
著者等紹介
柏木博[カシワギヒロシ]
1946年神戸市生まれ。現在、武蔵野美術大学教授。デザイン史、デザイン批判(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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びっぐすとん
16
図書館本。自分に適性が無いと思うものに家事がある。電化製品に溢れた時代なのに子供が小学生の内は育児と仕事と家事で自分の時間がとれないことが不満だった。もし「食事の家」が実現したら私はキッチン不要派(笑)自宅を建てる際にキッチンに重点を置く女性も多いけどね。第二次大戦時、米英ですら配給制になり備蓄の重要性を訴えてたなら、日本が食糧難になるのも道理。当時より食料自給率の低い現代はやはり大災害に備えなければ。結局、家政学って時代が変わっても主に女性の学問なんだな、女子大にしかないし。認識が変わる日はくるのかな?2019/06/09
ぷほは
2
言説としての「家政学」をめぐる100年史、といったところか。こういった話題は現代社会でも現代の社会学でもホットであり、それこそ『逃げ恥』の偽装結婚による家事代行じゃないが、様々な論点がありうる。しかしどうも記述が古い。なるほどマルクスやエンゲルスは今なお読むべきであることを否定はしないが、「政治学」と銘打ってるのだから、ここはその次にアレント『人間の条件』でしょう。「公共キッチン」の話とかは面白いのだが、今ひとつ理論的な詰が甘い気がする。ピケティとかウォーラーステインとか無理に出す必要ないのになー。2016/12/16
志村真幸
1
近現代のアメリカ、ドイツ、日本における、「家事」労働の理想/イメージについて分析したものだ。19世紀半ばのアメリカで女性の家事の負担を減らすために、キッチンのシステムが新考案されたこと。各国で儲けられた都市労働者のための共同キッチン。大正期日本で進められた生活改善運動。第二次大戦後アメリカに郊外に広まった「理想」の一戸建て住宅などなど。 文化や個人の嗜好といったレベルを超えて、家事の問題が「政治学」であった側面が強調されている。ただ、著者の専門分野であるデザインの問題と比べると、いまひとつ物足りない。2021/01/15
江戸っ子
1
家事についてはいつかちゃんとデザインしたいと思う。その時に参考にしようかと。2017/10/29