内容説明
政権党の有力政治家とNHK最高幹部が放送直前に接触し、慰安婦問題を扱った番組は著しく改変されてしまった。裁判の場でも争われ、多くの人々の関心を集めた二〇〇一年の事件の真相について、担当プロデューサーが沈黙を破って全過程を明らかにした。放送現場での葛藤、政権党と癒着するNHK幹部の姿勢を克明に記した本書は、NHK番組改変事件を知る上で最良の一冊である。関連資料収録。
目次
第1章 NHK会長―あまりに政治的で不可解なるもの
第2章 番組に至るまでの道筋
第3章 番組づくりの現場のせめぎ合い
第4章 番組はこう変わっていった
第5章 ほんとうのことは、どこにあるのか
第6章 東京高裁とわたし
第7章 現場から離れて考えたこと
著者等紹介
永田浩三[ナガタコウゾウ]
1954年大阪生まれ。東北大学卒業。1977年NHK入局。ディレクターとして『ぐるっと海道3万キロ』、NHKスペシャルの『社会主義の20世紀』などを担当。プロデューサーとして、『クローズアップ現代』などを制作。『ETV2001』の編集長。2002年、国谷裕子キャスターらと『クローズアップ現代』で菊池寛賞を共同受賞。2009年から武蔵大学社会学部教授。精神保健福祉士(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おさむ
34
2001年の番組改編事件は5年後、朝日新聞報道で明らかになり、法廷闘争にまで発展した。当時は色々とごちゃごちゃしていてよく理解していなかった問題点がこの本でよくわかりました。官房副長官だった安部晋三のとんでもないセリフ。現政権のメディア支配の原点がここにあります。2016/06/03
しーふぉ
21
2000年にNHKの作成した従軍慰安婦の番組に対し、安倍晋三、中川昭一が偏向報道は止めるようにNHK幹部を呼びつけたことがあった。著者は番組のプロデューサーであり、改変の指示、命令に対し何も出来なかったことを悔いている。政治家による容喙は与野党問わず珍しいことではないという言葉が怖い。そんな安倍晋三が総理大臣なんだよな…2017/03/12
coolflat
11
とにかく現場のデタラメさやふがいなさが目に付く。ジャーナリズムの基本である、経営と編集の分離がNHKでは全くなされていないのも驚きだが、最低限、政治や経営の現場介入を徹底的に抵抗しておけば、籾井や百田に蹂躙される現在の惨状もなかっただろうと思う。それにしても、いまだにNHKは検証番組を作っていないらしい。今からでもいいから総括しろよと思う。あと、朝日が録音を公開しておけば、安倍晋三の台頭はなかったんじゃないかと思う。この時点で潰せたかもしれなかっただけに、悔やまれるのではないか。現状の朝日を見ると、特に。2015/01/15
jamko
9
本件についての訴訟の東京高裁の判決文に「忖度」という言葉が出てきて、その後それがNHK内部で流行語のようになったとのことで驚いた。改変事件は2001年。モリカケで忖度という言葉が世間にフューチャーされるのが2017年。まあ「勘ぐれ、お前」と直接圧力をかけてきたのが安倍晋三だからね…もともとそういう周囲に忖度を強いる体質だったのが首相になってさらに強まったということなんだろう。全部繋がってる。内部告発を潰したNHKもますます政権ズブズブだし。まだ終わってないどころが現在進行形の問題として読んで良かった。2020/12/31
Yasutaka Nishimoto
4
慰安婦問題も取り上げたETVの特集。放送直前の横槍と、当事者(NHK側)の苦悩の手記。もっと最近の出来事かと思っていたら、既に20年も経っていたとは。現在の総理大臣も登場しての、予算案を人質に取ったような恫喝。「勘ぐれ、お前」ってヤクザじゃないですか。忖度の原点がここにもあったとは。何で、この首相が生理的に受け付けないのかがよく分かった。著者の文章がわかりにくいのは、弱点。思い込みもやや激しいように思えるが、現場が作る番組に手出しはさせないという思いは伝わった。こんなに誤植の多い本には初めて出会った。2020/08/10