内容説明
「日本国憲法は占領下にアメリカに押し付けられたもので、時代にそぐわないから改正すべき」「国際平和のために第九条を改正して参戦できるようにすべき」―改憲論のうねりが高まる今、憲法を読み直すことは、国家と個人の関係を問い直す絶好の機会でもある。同年生まれで敗戦の少国民体験を共有する作家・戯曲家と憲法学者が熱く語り合う。
目次
プロローグ 憲法の前に剣法の話をちょっと
第1章 「日本国憲法」は世界史の傑作
第2章 「憲法九条」をめぐる改憲論のまやかし
第3章 「国連中心主義」の行きつく先
第4章 「特別の国」日本が喪失した部分
第5章 「大いなる保守化」という危険な選択
エピローグ 「憲法」という言葉を鞣す
日本国憲法は生きている
ある劇作家・小説作家と共に“憲法”を考える―井上ひさし『吉里吉里人』から『ムサシ』まで
著者等紹介
井上ひさし[イノウエヒサシ]
1934‐2010年。上智大学フランス語科卒。放送作家としてスタート、「ひょっこりひょうたん島」で知られ、その後戯曲・小説へと幅を広げる。「九条の会」呼びかけ人
樋口陽一[ヒグチヨウイチ]
1934年生まれ。東北大学、東京大学、上智大学、早稲田大学の教授を歴任。憲法学を専攻。「96条の会」代表(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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AICHAN
26
図書館本。仙台一高で同じ学年を過ごした2人の対談。1992~93年のことだ。国民主権の平和憲法の尊さを訴えている。二十数年後の今、事態はとんでもないことになっている。現政権を陰で操る日本会議は新憲法草案を作成した。天皇は象徴でなく元首になっていて、自衛隊は国防軍になり、国民主権の基本は後退し、国民の基本的人権の条項は削られている。しかも「緊急事態条項」の設置が謳われている。これが設置され総理が緊急事態宣言をすれば内閣は全能になってやり放題のことができる。地下の井上ひさしはどんな風刺戯曲を書くだろうか。2016/11/24
壱萬参仟縁
23
‘94年初出。井上氏曰く、強さの窮極は、戦わないこと(1頁)。樋口教授曰く、国民主権という原理も個人の生き方を大事にするということが原点(13頁)。I氏曰く、日本の基本構造は、政治家と官僚と企業の三位一体で形成。それが政治をいびつにしている(44頁)。H教授曰く、国連はオールマイティーではなく、できないこともあるのをPKOの前提とせざるを得ない(140頁)。学部ゼミでPKO批判をした覚えがある。2014/12/30
シンドバッド
7
単行本発売時に未収録 日本国憲法は生きている などあり再読の機会となった。2014/07/27
Hiroshi
4
仙台一高で同級生だった井上ひさし(直木賞作家で戯曲家)と樋口陽一(憲法の東北大学名誉教授)が前世紀末に日本国憲法の基本を語った本。憲法とは法ないし掟、又は国の根本法と言われる。英語ではコンスティチューション。構成、組織、構造の意味であり、定冠詞が付くと憲法となる。このことから、日本語でも憲法を「この国のかたち」とするのが良いのではと。日本国憲法は、①国民主権、②人権尊重、③永久平和、が3原理となる。これらの原理の根底に大原理として「個人の尊厳」がある。憲法では改正権の限界があり、上記の原理は改正出来ない。2020/08/02
がんぞ
3
樋口の講演で井上作品の『41番目の少年』(孤児になったのは東京空襲のせい)から『国語元年』、『一週間』などで憲法観、平和主義の原点をさぐるのは良いが。直前に亡くなった司馬遼太郎まで平和主義に繰り入れるのはどうか。大東亜戦争を“戦略の無い信じがたいほど愚劣な”戦争とは言ってたが、軍事力を用いず話し合いのみで支那大陸とつきあえば(幣原外交だな)戦争にならなかった、とはリアルな歴史を知る司馬は思っていなかった筈。併合した朝鮮を亡命者の勝手な要求で独立させたことは今なお続く戦争の原因となった。連合国側史観コウモリ2014/10/14