内容説明
中国に今も残る暴力の慌源「抑圧と管理のシステム」を創設した康生の評伝。下巻では新中国建国後、中ソ関係にひびを入れ、文化大革命の後見人となってその采配をふるい、古参の幹部を陥れていくさまを描く。過去の記録を探し出し、多くの人々に嘘の自白を強要して、投獄、拷問、処刑を取りしきるかたわら、京劇や書画、文物を愛好した康生の物語は、現代中国の内部で働く独特のメカニズムを明るみに出す。
目次
第3部 皇帝の庭で(家庭の事情;佞臣の復活;ロシアという切り札;演劇愛好家;破壊のリハーサル)
第4部 文化大革命の後見人(演劇、事件;「混乱を恐れるな!」;蜘蛛が巣を作る;地獄の王;康生コレクション;林彪の陰謀;最後の裏切り;康生の遺産
著者等紹介
バイロン,ジョン[バイロン,ジョン][Byron,John]
中国政治と文化の研究者。香港と台湾で教育を受け、インドでジャーナリズム活動に従事した後、クアラルンプール、北京、ワシントンで外交官として勤務した。中国と東アジアに十八年にわたり滞在した。現在香港在住
パック,ロバート[パック,ロバート][Pack,Robert]
ノンフィクション作家(故人)
田畑暁生[タバタアケオ]
1965年東京生まれ。東京大学大学院(社会情報学)修了。神戸大学大学院人間発達環境学研究科准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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BLACK無糖好き
9
下巻は政治の中枢への復帰、文化大革命での一連の采配、最期の病死。自己の利益の為には誰であっても喜んで犠牲にし、権力者の意に迎合し自らの立場を躊躇なく変える事が出来る。極めて残虐な人間であるが、書画や美術品に対して恐ろしい程の執着心を持ち合わせている面も興味深い。死後に反革命集団の主犯とされ、党籍剥奪となるが、康生の作り上げた「抑圧と管理のシステム」そのものは現代中国でも息づいている。一党独裁の終焉に関わらず康生の遺産は消えはしないだろう、元々中国の土壌に根付いていたように見受けられる。 2016/06/28
BATTARIA
1
日本語で"こうせい"と呼ばれる中国人といえば、誰もが毛沢東の妻だった江青を想像すると思うけど、同じ"こうせい"でも、秘密警察のドンとしてはるかに猛威を振るった、康生という人物の一代記である。同じようにソ連で大粛清を取り仕切ったエジョフやベリヤとも、江青ら四人組や林彪に比べても、康生の知名度はあまりにも低い。でもだからこそ恐怖というべきだろう。2013/11/30
うたまる
0
「大衆だって?お前らはいつも大衆、大衆というが、党の指導性を何だと思ってるんだ!(中略)お前らの目的は古い幹部を一人一人粛清することなんだろう!」……独裁体制には異論を封じる機能が必要となる。それが空理空論を弄ぶ左派政権なら、正当な批判も多くなるため尚更に。しかし、例え正当な批判の封じ込めであっても、それが党や国家の求心力を高め安定や秩序をもたらすなら、僅かであれ正義と呼べるかもしれない。が、中国のこの惨状は何だ?まるで常に混乱状態を維持しようとしているみたいだ。戒厳時にこそ権力を発揮できる者のために。2017/08/16
シルバー井荻
0
中国共産党の秘密警察のボスだった人の評伝。この人が若い頃、スターリン政権下のソ連に留学に出て、そこで、秘密警察のひな形を学んだって話が因果めいてて好き。2016/02/10
ムカイジュン
0
とにかく酷い男、康生。中国の人はこのような人に導かれていた時期があるんだね。とても気の毒。毛沢東も見る目がないなあ。2014/04/08




