内容説明
スターリンの命令により、ポツダム宣言に反して行われた日本兵のシベリア抑留。その体験者である著者は、抑留の十五年前に、すでにスターリン演説に出会っていた。少数民族の母語を尊重する政策への感銘、改造社の編集者として垣間見たソヴェトへの憧憬―。その「理想」が偽りであったと気づくまでに、どのような思想体験があったのか。エスペランティストの痛恨の回想。
目次
「スターリン時代」の大きなひろがり
スターリンの『民族文化と国際文化』
国際文化研究所の外国語夏期大学
柏木ロンドの人々
改造社時代
二・二六事件とスペイン市民戦争
ジイドとフォイヒトワンガー
ジョン・デュウイの『トロツキー事件』
ロマン・ロランとヘルマン・ヘッセ
ジョゼフ・デーヴィス『モスクワに使いして』
横浜事件、または神奈川事件
敗戦と「赤色帝国主義」
日露戦争の報復と「バビロンの捕囚」
垣間見た収容所群島
懲罰大隊とチトー問題
古都イルクーツクで見聞きしたもの
スターリン獄のなかでのエスペラント
「偽りの神」スターリン
著者等紹介
高杉一郎[タカスギイチロウ]
1908‐2008年。東京文理科大学英文科卒業。改造社編集部を経て、1944年応召、ハルビンで敗戦を迎え、四年間シベリアに抑留。静岡大学、和光大学で教鞭をとる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ステビア
14
偽りの神への信仰、スターリニズムにヒューマニズムとインターナショナリズムをもって抗した思想の遍歴。2020/08/26
ががが
1
著者が旧ソ連での俘虜生活も含めたスターリニズムの思想体験が綴られている。旧ソ連でのエスペラントとの関係などが興味深かった。もっと読む人が読めば、とてもおもしろいものになるだろうけど、なかなか当時の思想背景が共有できていないので、読みこなすことはできなかった。しかし俘虜体験の記録は生々しい経験にしっかり裏打ちされて、スターリンに興味がなくても読む価値があると思った。2014/10/16
カネコ
0
○2010/05/12
Arte
0
エスぺランティストの著者が、日本から書物で知った当時のソ連の情勢→シベリア抑留されて、現地で人に聞いたりしたソ連の情勢の話。既にシベリア抑留記を出版しているようで、この本は補遺的な散漫な感じだが、そこそこ面白かった。エスペラント運動って左翼が頑張ってやっていたけど、スターリンが帝国主義的言語政策をとったために弾圧されたとか、35年にスターリン主義を批判するエスペラント語の書物が出ていたとか、メキシコでトロツキー裁判のやり直しっぽいことをしていたとか。2024/06/11