内容説明
はじめて翻訳紹介される一九三九年ノモンハン事件のシーシキン文書。モンゴルと満州国の両境紛争が、なぜ日本関東軍とソ連赤軍の双方二万の死傷者を出す四カ月の本格的戦争に至ったのか。作家シーモノフによる従軍記を加え、モンゴル語、ロシア語文献を渉猟した詳細な注と解説が謎の戦争の経過と真実を明らかにする。
目次
一九三九年のハルハ河畔における赤軍の戦闘行動(S.N.シーシキン大佐)(日本帝国主義者の計画とモンゴル人民共和国への攻撃準備;結語)
ハルハ河の回想(シーモノフ)
著者等紹介
田中克彦[タナカカツヒコ]
1934年兵庫県生まれ。東京外国語大学モンゴル語科、一橋大学大学院社会学研究科、ボン大学哲学部で、言語学、民族学、文献学を学ぶ。言語学者、一橋大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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skunk_c
23
シーシキンの戦史は第2次世界大戦終結直後に著されたもので、ソ連サイドから見たノモンハン戦史。図が分かりやすく、特に8月の攻勢が用意周到で考えられた作戦であることが分かる。ただし「ソ連側」からの見方である点は否めない。そこは割り引いてみる必要がある。シーモノフの回想は8月の攻勢以降、ほぼ戦闘が終わったころのものだが、極めて興味深い内容。特に遺体収容、捕虜交換などに立ち会った情景がつぶさに描かれるが、訳者のあとがきにもあるように、そのやりきれない雰囲気がよく伝わってくる。その生々しさこそ後世に伝えるべき。2017/05/21
活字の旅遊人
14
訳者が書いた「ノモンハン戦争」に比べると、読みにくかった。
みなみ
12
半藤一利著「ノモンハンの夏」を読んだので、積んであったこの本も読んでみた。前半はシーシキンによるノモンハン事件の記録。この記録は事実と違う部分もあるようだが、訳者の田中克彦による注釈があるのでフラットに読める。後半は作家シーモノフによる従軍記録。日本人について書かれた部分が気持ちをえぐる。曰く、あまりの屍体の多さに、最初は自軍の屍体を丁寧に回収していた日本軍でも、どんどん雑な扱いをするようになってしまうという……それだけ日本軍は甚大な犠牲を出していたということだ。2022/10/01
Toska
4
ノモンハンをめぐってソヴィエトの同時代人が記し、日本語に訳された数少ない(率直に言って少なすぎると思う)記録の一つ。とりわけ、後にソ連文壇の大物として活躍したシーモノフの回想には一読の価値がある。当時のソ連で、しかも軍人ではない文学者が、ノモンハンで相まみえた日本兵をどのように観察していたか。戦場の生の空気がありありと伝わってくる。日本軍が捕虜となった同胞を取り扱う態度は、シーモノフをして違和感を覚えさせるほど過酷なものであったようだ。2021/06/16
ぺんぎん
3
ノモンハンが気になってしまうのは村上春樹のせいだと思う。陸軍は地形に依拠して戦う印象だから、何も特徴ないノッペリ野っ原で、死闘を繰り広げる本戦役に違和感を感じてしまう。戦術・戦略の話は『失敗の本質』に詳しいから、今回はソ連側どんなもんなんだろうって読んだけど、前半の戦闘日誌みたいのは味気なかった。戦史研究家には面白いかもだけど。後半は文筆家が書いてるから面白かった。戦場の匂いとか、停戦後の日本軍人とのやり取りとか新鮮。ジューコフ推しがスゴイのは時代かな。戦争を忌避してるけど、田中さんの解説、詳細で為になる2022/11/23
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- 和書
- 「自分の価値」を高める力