出版社内容情報
オーストリアの生物学者カンメラーはサンバガエルを使用した実験で獲得形質が遺伝すると主張した.ダーウィン学派は彼の実験を偽造だと攻撃した.論争に敗れたカンメラーの悲劇とアカデミズムの独善性を糾弾したドキュメント.
内容説明
一九二〇年代、オーストリアの生物学者パウル・カンメラーはサンショウウオやサンバガエルを使用した実験で獲得形質が遺伝すると主張した。すぐさまダーウィン学派は彼の実験を偽造だと攻撃した。『真昼の暗黒』『偶然の本質』などで有名な作家ケストラーが、遺伝学論争に敗れたカンメラーの悲劇とアカデミズムの独善性を糾弾した白眉のドキュメント。
目次
1 異端の生物学者パウル・カンメラー
2 ラマルク学説とダーウィン学説の抗争
3 カンメラーが巻き起こした衝撃
4 ダーウィン学説の行き詰まりのなかで
5 カンメラー批判の始まり
6 標本の真偽をめぐる戦い
7 英国での講演と論争
8 センセーショナリズムの嵐
9 証拠―不正か陰謀か
10 悲劇的な死の謎
エピローグ それでも進化する
著者等紹介
ケストラー,アーサー[ケストラー,アーサー][Koestler,Arthur]
1905―83年。ブダペストに生まれウィーン工科大学に学ぶ。編集者を経てスペイン革命に参加。戦後スターリニズム批判の『真昼の暗黒』で名声を得た
石田敏子[イシダトシコ]
国際基督教大学大学院修了。日本女子大学日本文学科教授。日本語教育専攻
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感想・レビュー
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樽
5
だれも追試できないほどの高い技術を誇るがゆえに、その研究の正否が明らかにならないという不幸。いまでもわからないままなのだろうか2009/09/02
thinkeroid
4
著者と訳者がカンメラー擁護で頭に血が上っていて、岡田節人解説が遠回しに、しかしハッキリと、否定している。2017/03/07
ヴェルナーの日記
4
パウル・カンメラーのアリテス(サンバガエル)やサンショウウオの獲得形質についての研究に対するノンフィクション作品で、この研究が世の中に物議をかもし出した新ダーウィン学派とラマルク学派の論争に発展していく。カンメラー自身、こんなことになるとは思いもしなかったに違いないが、彼の意に反して、偽装問題まで及び、カンメラー自身、最後には自殺まで追い込まれてしまう。 そこで、「果たして獲得形質は遺伝するか否か」を著者ケストラーの筆致鮮やかな文章で解明していく一書。2013/03/15
adhvanya
2
「The Ghost In the Machine」のアーサー・ケストラーの著作という事で反射的に購入したのはいつだったか。エピジェネティックな、たとえばメチル化などの変化は母から子へと伝わる事が現代では明らかになっている。とはいえ、この本の主題となっている実験は何しろ再現性が無かったのだからしょうがない。ケストラーの言説が、時代とずれているのを感じた一冊だった。彼の中ではダーウィニズムはいまだイデオロギーや、あるいはパラダイム論の空気を湛えている気がする。2010/09/22
めあら
1
高校の授業で習うようなダーウィニズムをそのまま盲信してたので反省。人類が進化を全て理解できる日は来るのだろうか2013/03/12