出版社内容情報
異界からのざわめきのような琵琶の響きと語りの声が、この世界に亀裂を入れ、人としてあることの根源的な哀感に私たちを向きあわせる。長年フィールド調査を重ねた著者が、平安時代に遡るその起源から二〇世紀末の消滅にいたるまでにいたるまで、あの世とこの世の媒介者であった琵琶法師たちの実像を探る。(解説=伊藤比呂美)
【目次】
序 章 二人の琵琶法師
「耳なし芳一の話」
芳一話の系譜
耳と異界
モノ語りの担い手
最後の琵琶法師
現代の芳一
ハーンと芳一
第一章 琵琶法師はどこから来たか――平安期の記録から
大陸の琵琶法師
ふたつの伝来ルート
盲僧の六柱琵琶
サワリという仕掛け
平安貴族による記録
『新猿楽記』の「琵琶法師」
「地神経」読誦の記録
地神の由来
四季の土用と「地神経」
霊威はげしい王子神
地母神の信仰
東アジアでのひろがり
物語の母型
第二章 平家物語のはじまり――怨霊と動乱の時代
怨霊のうわさ
竜王と平家の怨霊
安徳天皇の鎮魂
竜王の眷属
『法華経』の竜女
大懺法院の建立
『徒然草』の伝承
語り物と平家物語
語り手としての有王
琵琶法師と聖の接点
編まれてゆく物語
巫覡としての聖
モノの語りの文体
匿名的な〈声〉
「視点」のない語り
モノ語りとテクスト
第三章 語り手とはだれか――琵琶法師という存在
身体の刻印
「内裏へは五躰不具の者入らざる……」
穢れと聖性
干死と怨霊
?丸と宿神
善と悪の彼岸
母と子の神
竜女と韋提希夫人
ジェンダーのかたち
第四章 権力のなかの芸能民――鎌倉から室町期へ
寺社がはたした役割
座の形成と村上源氏中院流
当道座以前の数派
一方派と東の市
覚一本の成立
当道座の成立と本文の相伝
「平家」の流行と南北朝の政治史
「室町殿」への正本の「進上」
将軍家と当道座
村上源氏から清和源氏へ
将軍家の起源神話
第五章 消えゆく琵琶法師――近世以降のすがた
応仁の乱以後
徳川政権との結びつき
地神盲僧への締め付け
「脱賤民化」のための支配構造
諸職諸道とのつながり
三味線・浄瑠璃の台頭
東北の奥浄瑠璃
西日本の座頭・盲僧
近代に残った琵琶法師
「あぜかけ姫」の伝承
機織り淵の伝説
「俊徳丸」の伝承
アルトー版の「耳なし芳一」
おわりに――琵琶法師とはなにか
山鹿良之の「俊徳丸」、演奏動画について
現代文庫版あとがき
解説 いっしょにとむらってくれる人(伊藤比呂美)



