出版社内容情報
鈴鹿の山に暮らす山賊が唯一怖れていたのは満開の桜の森であった。ある日、山賊は美しい女と出会い、女の夫を殺して八人目の妻にする。女の欲望には涯がなく、山賊の心を蝕んでいった。そして、また桜の季節がめぐってきた――。(カラー8頁)
内容説明
鈴鹿の山に暮らす一人の山賊。怖いものなしの山賊が唯一怖れていたのは満開の桜の森であった。ある日、山賊は旅をする美しい女に出会い、その夫を殺して自分の妻にする。わがままな女の言いなりになる山賊と、涯のない欲望を持つ女はやがて―。
著者等紹介
近藤ようこ[コンドウヨウコ]
1957年新潟市生まれ。漫画家。折口民俗学への関心から國學院大學に進学し、在学中に漫画家としてデビュー
坂口安吾[サカグチアンゴ]
1906‐1955年。新潟市生まれ。作家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
133
近藤よう子さんの坂口安吾シリーズ2作のうちのひとつです。小説よりも登場人物たちがあまり怖い感じはしません。かえってそのためにぶきみさの印象は残るような気がしました。さくらの花びらが舞い散るさまや最後の鬼が出てくるさまはさすがです。2018/08/15
ケンイチミズバ
115
怪談です。山賊を生業とし欲しいものは殺して奪う、自分がしていることには罪悪感も恐れもないのに孤独や得たいの知れない迷いや不安には恐れをなす。人の非道な生き方の矛盾をついています。だがしかし、男は純粋に生きており、山奥で独りでなく都で人と多くの関わりを持ちながら生きていれば当たり前に道徳を身に付け例えば働いて欲しいものは手に入れることをしたでしょう。美しい女が厄介なだけになり、自分の欲を満たすどころか恐ろしい存在になります。空が落ちて来て空しい毎日が終わればいいのにと願ったりするのは文学的で惹きつけられた。2019/08/13
厩戸皇子そっくりおじさん・寺
60
坂口安吾の小説を近藤ようこが漫画化。同時発売の『夜長姫と耳男』が素晴らしかったので、こちらも読みたくなった。面白かったのだが、『夜長姫と耳男』は読んでいて「これは自分の事だ。この中に私がいる」と、共感を以て読んだのであるが、こちらの方は共感はしなかった。こちらから読みとれるものは今の私と関係のないものに感じた。ただ、私が『夜長姫』で泣いた様に、この漫画で泣いてしまう人がいるだろうと思う。いつかまた違う気分の時に再読したい。その時に泣くのは怖いが、きっとこの物語は悩みも悲しみも昇華してくれるだろう。2017/12/02
まこみや
57
安吾の原作はまだ読んでいない。最初に浮かんだのは、梶井基次郎のあの文句だった。「桜の樹の下には屍体が埋まっている!(‥‥)何故って桜の花があんなにも見事に咲くなんて信じられないことじゃないか。」あたかもそれは、華麗にして残酷なもの、儚いが故に永劫なるものの象徴だ。物語に描かれた、女の贅沢と狂気も男の退屈と孤独も、すべては、妖気漂う縹渺冥冥たる満開の桜がもたらした邯鄲の夢なのだろうか。2022/12/02
Vakira
54
近藤ようこさんの「夜長姫と耳男」と一緒に購入。「夜長姫」が凄くMy琴線に響いたので連続して読む。なにこれ これも凄い。これもファム・ファタールだ。旅人を襲って暮らしていた鈴鹿峠の山賊。ある日の夫婦の旅人を襲い連れの美女を女房にしたことで山賊の生活が狂いだす。なんたってこの美女、山賊に生首を要求する。それも都でだ。山賊の狩ってきた生首で人形遊び。もうホラーの世界。「夜長姫」に劣らずの狂気の強烈さ。淡々と描いているようこさん凄い。近藤ようこさんもっと読みたい。そして原作 坂口安吾さんも読んでみたくなった。2020/11/02