出版社内容情報
なぜこのように多種多様な漱石全集が刊行されたのか。独特の言葉遣いの校訂、出版権をめぐる争いなど、100年の出版史を語る。
内容説明
国民的作家・夏目漱石の死の翌年から現在まで、数十種類ほども刊行されてきた漱石全集。なぜこのように多種多様な全集が生まれ続けたのか?漱石独特の言葉遣いをどう校訂していくのか?出版権をめぐる出版社間の争いとは?全集づくりに関わる人びとの熱い思いにせまり、およそ百年にわたる漱石全集の「伝記」をたどるとともに、出版史の中での個人全集の位置づけを問う。
目次
最初の漱石全集―大正六年版と八年版
第三回全集の経過―大正十三年版
普及版の刊行―昭和三年版
二〇回忌の決定版―昭和十年版
桜菊書院の登場―昭和二十一年‐二十五年
創芸社版の全集―昭和二十八年‐三十年
岩波の新書版全集―昭和三十一年
新表記による角川版―昭和三十五年
漱石死後五〇年―昭和四十年
集英社版全集と荒正人―昭和四十五年
重版タイプの全集―昭和四十六年以降
補遺―新千円札発行前後
著者等紹介
矢口進也[ヤグチシンヤ]
1929年大連生まれ。図書新聞、紀伊國屋書店、竹内書店、美術出版社などに勤務。図書新聞取締役相談役を務める。2011年8月逝去。出版史・読書論などを研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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浅香山三郎
16
全集を読んだり、買つたりするといふことが余り無いが、夏目漱石の全集くらいは知つてゐる。しかし、岩波版以外は見たことがない。本書が書かれたのは、1985年で、漱石歿後150年の2016年に岩波現代文庫となつた。2016年の全集に合はせて、岩波は新書でも漱石ものを出したが、なかなか商売がうまい。最初の版元が岩波ではないためもあつてか、全集発刊を巡つての岩波や漱石の弟子たち、あるいは戦後の夏目家・桜菊書院と岩波との対立等も詳しく取り上げられる。集英社版の荒正人の徹底的な編集方針と執念等、本書によつて初めて知る。2018/09/29
パトラッシュ
10
文学者当人でなく個人全集の伝記など日本で、いや世界でも唯一であろう。これほど全集が繰り返し各出版社から刊行されるほど商売になる作家は漱石以外に存在しない。だからこそ全集の周囲で展開する人間の欲望や揉め事は哀しくも微笑ましい。師の全集刊行のため奔走する漱石の弟子たちや漱石作品を「金蔓」視する夏目家、戦後の混乱期に海賊版が出たり、著作権消滅に焦った夏目家が題名などに商標権を設定しようとする部分など、バルザックの小説を読んでいるようだ。漱石文学の魅力あればこそだろうが、荒正人などは漱石に憑かれた戦死者に思えた。2019/11/01
SK
3
340*夏目漱石の全集の歴史。一冊の本になっちゃうのも、漱石ならではかなぁ。漱石の小説はそんなに読んでいないけど、おもしろかった。著作権が切れて困窮している未亡人は、ちょっとかわいそうだった。全集の校正は大変そう。2016/12/17
Shun'ichiro AKIKUSA
1
いろいろ勉強になった。2017/05/04
Kuliyama
1
楽しく拝読しました。文章を揃えるのは、全文検索ができる今でも大変な作業で、昔は気が遠くなるようなことだと納得しました。家にも漱石全集があって読んでみようと思います。2017/02/09
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