内容説明
離婚した「あたし」が、子連れで家を出て、日本も出て、向かった先は南カリフォルニア。荒涼とした不毛の地で繁殖するユーカリの木を目にした「あたし」は…。詩人として旺盛に活躍し続ける著者による傑作小説集。芥川賞候補作二作に加えて、単行本未収録の幻の中編『スリー・りろ・ジャパニーズ』も初収録。
著者等紹介
伊藤比呂美[イトウヒロミ]
1955年東京生まれ。詩人。1978年現代詩手帖賞を受賞。99年『ラニーニャ』で野間文芸新人賞、2006年『河原荒草』で高見順賞、07年『とげ抜き新巣鴨地蔵縁起』で萩原朔太郎賞、08年紫式部文学賞、15年、坪内逍遙大賞受賞。97年に娘たちとともにカリフォルニアに移住し、以後、日本とカリフォルニア間を往復する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
美登利
71
伊藤比呂美さんのエッセイが好きです。自分とは全く違う生き方をしてるのに、なぜか凄く共感してしまう部分があって。違うからこそ憧れみたいなものがあるのかも。二作品は芥川賞候補にもなったらしいです。比呂美さんのあの詩のような(あまり読んだことないけど)ダラダラ思考が漏れ出すような文体は苦手な人が多いかもしません。芥川賞は自分の感情がとめどなく吐き出されてる文章が多いとは思うのだけれども。夫である年老いた男性が登場するけれど、なぜこの人と知り合って結婚したんだろう?と何度となく思ってしまうんだよね、不思議だ(笑)2016/08/28
ネギっ子gen
13
本書収録の3篇のうち、『ハウスプラント』『ラニーニャ』ともに、芥川賞の候補になって、落っこちた。野間文芸新人賞は貰ったが。そのとき選考委員のKさん(誰じゃ?)に、しみじみ言われたそうな。「あなたはもっと真剣に小説家に向き合わないといけませんね」と。芥川賞選考委員でもある御仁の温かい言葉が心に沁みたシロミ氏、覚悟を決め『スリー・りろ・ジャパニーズ』を書いた。全2作に比べると、いかにも小説。読みやすい。が、らしくないんだよねぇー。著者もそう感じたのでしょう。最後は、またぞろ歌い出した。これでなくっちゃ、ね。⇒2020/09/03
minazuki
10
1998~2001年に発表された3篇。比呂美さんがアメリカに移住したのが1997年。日本を離れアメリカへ行き、かなり年上の男性と知り合い同居するようになったいきさつを知りたいと読んでみた。「ハウス・プラント」「ラニーニャ」にはそのあたりのことは書かれていなかった。日本とは違うカリフォルニアの気候・植物、同居するアアロンさんとの暮らし、娘たちのアメリカへの体を張った抵抗。饒舌体とでもいうような語りは小説というより詩なのかもしれない。2018/10/10
バーベナ
5
普通に暮らしている人の独白、心の動きを、だだ漏れ状態で体感できることは、現実ではめったにないことなので、そこが面白いと思った。2016/06/23
パンチ
4
書き出しが面白かったので衝動買い。頭の中に浮かんだ言葉をそのまま落としたような不思議な文章。他人の頭の中の思考を覗き見たような生々しさで少し気恥ずかしさを感じるほど。2020/03/07