内容説明
「人生に意味などない」―こう達観した文学者モーム自身の人生には、幾多の「謎」がある。モームが愛した女性、そして男性とは誰か。結婚から離婚に至る実態とは。スパイだったのは本当か。晩年に襲ったスキャンダルとは。モーム作品を愛する著者が、作品を改めて読み解き、新資料も用いつつ書き下ろした全一二章。岩波現代文庫オリジナル版。
目次
モームは「屈折した」子供だったか?
モームは本当に医者だったのか?
モームが愛しかつ憎んだ女性「ミルドレッド」とは?
モームはどうして劇作家になったのか?
モームは女嫌いだったか?
モームの結婚と離婚の真相とは?
モームが愛したハックストンとは誰か?
モームは本当にスパイだったのか?
モームの熟年自画像とは?
モームは日本でどう迎えられたのか?
モームの老年についての考え方は?
モームの最晩年の姿とは?
モームとの架空の対話
著者等紹介
行方昭夫[ナメカタアキオ]
1931年、東京に生まれる。1955年、東京大学教養学部イギリス科卒業。現在、東京大学名誉教授、東洋学園大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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やどかり
15
モームが好きなので、思わず手に取った1冊。来日時のエピソードや、作品を引用した説明もおもしろく、知らないことが多かったので興味深く読めた。モームの幼少期が「月と6ペンス」のフィリップと重なる。モームの謎解きは、著者の考察なので、そんな解釈もあるかなぁというものもあった。何年も前から原文で読みたくて原書を持っている私。学生時代の著者が、辞書の助けを借りれば原書が理解できたというのを知って、俄然やる気が出た。2015/05/10
たかぴ
4
モームさんの性的嗜好やらパートナーとの関係、娘との関係と少しわかるかな。老齢になる七十代以降の事を五十代の頃から語ってたのに、実際に現実の身に降りかかった事と比べて哀しくなった。2024/09/05
pika
2
この間読んだ「サマセット・モームを読む」のかなりの部分がまとめられていてありがたい。あちらは著作ごとにテーマを分けていたのに対して、今回は題名に倣い、モームの様々な謎という切り口で分けている。昔のモーム伝などにも言及されているので、モームについて知るならおそらくこれ一冊でOK!情報量も多い。秘書二人についての詳細、来日時の詳細、「人間の絆」ミルドレットのモデルについての詳しい考察など、深く掘り下げている。個人的に「アシェンデン」が好きなのでスパイとしてのモームに一章割かれていて嬉しい。2023/11/25
SK
2
239*モーム先生の評伝。あともう少し産まれるのが遅かったら、セクシュアリティを隠さず、もっと楽に生きられたのかなぁ…。いろいろと辛かっただろう。架空の対話が唐突なんだが、どういう意図があるのか? 必要なかったんじゃないか?2019/09/28
Hiro
1
これも図書館本。モームは好きな作家の一人。特に「お菓子とビール」は何年かに一度繰り返し読んでいる。本書はモームの著名な研究者による伝記的なエッセイ集。モームが同性愛者であったことやその死の直前の娘との確執などはほとんど知らなかったのでとても参考になった。また未読の名作の数々を教えられ今後の読書欲が大いに刺激された。2018/02/04