出版社内容情報
注文された品物がないときは「おまへん」ではなく「おまへんねん」と答えるのが商人の極意。動物園の檻の前の立て札に「かみます」とだけ書くのは合理性の表れ。巧みなことば遣いと背後にある感覚を、鋭く軽快に語る大阪文化論。
内容説明
客のややこしい注文には「惜しいなあ、きのうまであってん」と切り返す。動物園のオリの前の立て札には「かみます」とだけ書いてある。距離をとらずにさっぱりと、聞いて退屈せんように、なんなと工夫して話すのでなければ、ものを言う甲斐がない。誤解されがちなことばの意味と背後にある感覚を、鋭く軽快に語る大阪文化論。
目次
なんなと言わな、おもしろない
せっかくものを言うてくれてるのやから
ネンが足らんは念が足らん
言うて、言うてや、言うてんか
理づめで動くが理くつ言いはきらい
よう言わんわ
ぼちぼち行こか
待ってられへんがな
大阪弁は非能率的か
大阪弁は非論理的か
笑い指向と饒舌の背後にあるもの
内なる大阪ことばを求めて―あとがきの代わりに
著者等紹介
尾上圭介[オノエケイスケ]
1947年、大阪市淀川区生まれ。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。学生時代は落語研究会に所属。東京大学文学部助手、神戸大学文学部助教授を経て、東京大学大学院人文社会系研究科教授。博士(文学)。専門は日本語学、特に文法論。日本笑い学会理事(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Shoji
42
暖かくて、親しみがあって、私は大阪弁が大好きだ。だが、時々お節介だし騒々しくもある。東京ディズニーランドの開園待ちの行列で、はるか後ろのほうから騒々しいノイズが聞こえたとする。99.9%大阪弁だ。それはもう笑ってしまうくらいに大阪弁だ。「ええねん、ほな、ぼちぼち」それだけで会話が成立する大阪弁すごいな。大好きだ。2020/02/15
浅香山三郎
11
大阪弁のユーモア、サービス精神について、言語研究の立場から掘り下げる。キツい大阪弁の世界ではなく、やはらかくて、やんはりと自分の意思を伝へる大阪弁の工夫がよく分かる。はるき悦巳さんのイラストも、いかにも大阪の市井(や盛り場)のようすを描いてゐて面白い。2019/05/04
犬養三千代
8
2011年6月16日 1999年3月創元社 2004年6月講談社文庫 三回目の発行なんだね。 再読のような気がします。やんわりした表現、反応の鋭さは子供の頃からの会話力の賜物た。 「ぼちぼち行こか!」 「はよせんかいな」の「な」の効果 などなど。全国区になったのは吉本興業の東京進出だ。松竹新喜劇のもっと美しい大阪ことばは駆逐されたのはちょっと惜しい。2019/01/20
katta
6
関西の言葉のなかに、いつもひとり他人が隠れている。ふたりで話していても、実は三人称だったり同じ方向を向いて話していたり。言葉数が多いわけも、ふたり集まれば漫才になることも、実は関西人の気質と思考形態であることを、言語学的に解き明かした一冊。非常に面白かった。2010/11/06
ポカホンタス
3
一見乱暴で反理性的と見られがちな大阪弁を、実は論理的で細やかな配慮にあふれた言葉であること、停滞を嫌い変化を好む大阪人気質にみあった言葉であることなど、大阪人の心のうちにまで入り込みつつ、言語学的な精密さで記述された労作。読み応えあり。2010/10/26
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- 和書
- おばけのカレーパン