内容説明
昭和三十年代前半、「水虫」とあだ名された貧相な面構えとひがみっぽい性格ながら、草創期の広告・放送業界をたくみに遊泳して芸能プロダクションの社長、出版社の経営者にのしあがっていく寺川友三。金もうけに専念しつつ「焼跡ランド」の構想を練る男の姿を通して、戦後の繁栄の虚しさと焼跡闇市への郷愁を描く長編小説。
著者等紹介
野坂昭如[ノサカアキユキ]
1930年鎌倉市生まれ。45年神戸大空襲で養父を失う。47年新潟の実父のもとへ帰る。50年早稲田大学文学部仏文科に入学し、7年間在学。音楽事務所勤務、コント台本作成、作詞等に従事。63年「エロ事師たち」発表。68年「アメリカひじき」「火垂るの墓」で第58回直木賞受賞。80年「四畳半襖の下張」裁判で有罪確定。83年参議院議員当選、同年総選挙に田中角栄元首相の地盤・新潟三区から立候補し落選。97年『同心円』で第31回吉川英治文学賞受賞。2002年『文壇』およびそれに至る文業により第30回泉鏡花文学賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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tyfk
4
三木鶏郎や永六輔をモデルにした人物が出てくる。自伝的小説、虚実ないまぜなのだけど、野坂が三木の内実バラすぞと脅迫、その後の展開とか面白い。冗談工房で三木のマネージャーとなるも会社の金を使い込み首になる経緯、そのあたりを思わせる。永六輔はなんか説教くさくて、むかしから嫌いだったけど、若い頃もほんとやなやつだなと。任侠道の名家、梅ヶ丘の老人がいい感じ。2024/09/30
hirayama46
2
戦後の広告・芸能業界を独特の感覚でのし上がっていった男の一代記で、やや長めの分量にしてはいささか単調な部分もありましたが、野坂昭如の話芸はやはり楽しく、ラストも急激な印象がありますが、その唐突さが空虚さとマッチして良かったと思います。2022/11/11
koala-n
0
特に何の才覚があるわけでもないダメ青年・寺川友三が勃興期の広告業界・TV業界で、なんだかわからないままにあれよあれよと出世していく、というのが一応のストーリーだが、もちろん野坂昭如作品だけあって、ストーリーはもちろんだが、その魅力は細部のディティールと畳み込むような文体にある。それに出てくる人士のクセのあることおびただしく、笑わせられることもしばしば。ただ、しっかりした人間観察がベースにあるので、どこか苦味も感じさせられる。かなりの長編で、少し構成の面で難ありだが、気になるほどでもなし、気がつくと読了。2013/09/07
康芳英
0
草創期の広告・放送業界を舞台にどうしようもない駄目男がはったりと運で成り上がっていく姿と業界のデタラメさ・どうしようもなさが面白い。そして野坂昭如の半自伝的小説ということで、当然ながらこれもまた野坂昭如という人物のイメージそのものの異様なエネルギーに満ちた小説になっている。読みにくい文章の筈なのにぐいぐい読んでしまうんだもの。あと作中に永六輔がモデルのキャラが出てくるけど、これも永六輔のイメージまんまで面白い。2012/03/28
しぴこ
0
他の作品も読まなきゃ!ラスト畳み掛けるようにいってしまった!!2011/02/08
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