内容説明
秋の夜が落ちて、星が光りはじめたら、わたしは最後の言葉を言おう―二〇世紀黎明のロシアの漆黒の闇を、爆弾を抱えて彷徨するテロリストたちの張り詰めた心情と愛と孤独。社会革命党(エス・エル)戦闘団のテロ指導者サヴィンコフがロープシンの筆名で発表した終末の抒情に富んだ詩的小説は、9・11以後の世界の黙示録である。長編評論「サヴィンコフ=ロープシン論」を付す。
目次
蒼ざめた馬
サヴィンコフ=ロープシン論(川崎浹)
著者等紹介
ロープシン[ロープシン][Ропшин,В.]
1879‐1925年。本名サヴィンコフ。エス・エル戦闘団を指揮して、モスクワ総督プレーヴェ、セルゲイ大公の暗殺に成功。1917年の革命の後、白軍の武装蜂起を指導し、逮捕され投身自殺
川崎浹[カワサキトオル]
1959年早稲田大学大学院(露文学)修了。ロシア文学者。早稲田大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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こぽぞう☆
14
ペルッツの林檎ちゃんにの参考文献に載ってた(ような気がする)ので、図書館の書庫から出してもらった。革命前夜のロシア。テロリストの一人称で描かれる。著者自身有名なテロリスト・革命家で、それだけに迫力がある。主人公のペシミズム、ワーニャの信仰、軽佻浮薄なエレーナ。2020/01/09
nranjen
7
やばい。恋に落ちた。テロリストの心中だけでなく彼が(彼女もいるかもしれない)どうしても割り切ることのできない何か、つまり大義のために人を殺すことへの疑問が虚構の形の中でぶちまけられている。おそらくそれを文学的に表現したのが、彼の作品を読んで衝撃を受けたであろうカミュだ。ちなみに私が研究している作家も多分彼の小説を読んだと思う。そして失敗作を書いている。このような作品が書けるのはサヴィンコフだからだ。彼の偉大な働きを知るには岩波新書のロシア革命を読まなければならない。あとがきが秀逸である。2023/02/18
TomohikoYoshida
4
全体の1/3が、川崎浹の「ザヴィンコフ=ロープシン論」で、正直なところ長すぎる。 テロリストは、どうにかテロを成功させた後、恋人の夫を決闘の末に殺害。恋人は自殺し、自分はテロ行為から足を洗うという話。 手段が目的化していたり、仲間のテロリストがキリスト教徒として殺人に加担することへの葛藤を持っていたりと、テロリストたちの心の状態を描いている。2017/05/02
Mark.jr
3
殺伐とすら言えるシンプルな文体で、総督を暗殺しようとするテロリストの内面や恋愛、そして幻滅が淡々と描かれます。曇天のような暗い雰囲気を纏っていますが、有無を言わせない静かな迫力があります。2018/11/08
lico
3
物語の題材はテロリズムであるにも関わらず、叙情的でどこまでも美しかった。まさに革命家というよりも詩人のよう。神を信じ、神と愛を同一視するワーニャがテロリズムと神への信仰との間で苦悩する姿が痛ましい。誰も殺させないために殺すと言うのは随分苦しい正当化だと思った。さりとて神を信じず愛にいきるジョージの姿は、人間的には見えずすべてを憎み、すべてを投げ出す姿勢はかなり気持ちが悪い。共感はできないし全体的に倦怠感のようなものに覆われているにも関わらず、いつまでも読んでいたくなる不思議な本だった。2015/12/08




