出版社内容情報
ダム建設に関わる,政・財・官界を舞台にした一大疑獄と,野望と欲に取り憑かれた人々を活写し,政治腐敗と国費の濫費に対する国民の怒りを喚起した問題の長編小説.佐高信解説
内容説明
時代は高度成長期、総裁選をめぐり巨額の買収が与党内で起こった。その穴埋めの政治献金を得るため、ダム建設の入札が、あるからくりとともに推し進められた…。政界・財界・官界を舞台にした一大疑獄と、野望と欲に取り憑かれた人々を活写し、政治腐敗、国費の濫費に対する国民の怒りを喚起した問題の長編小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
101
九頭竜ダム落札疑獄を題材とした石川達三による政治小説。池田勇人三選あたりで時代は古いが、テーマは現代にも繋がるように思える。政治家と財界の、まわりは金色に輝いているが、真ん中は真っ黒に腐っているその正体を暴く。政治の裏で蠢く人たちが腹黒く、骨太で存在感がある。暴挙というべきローアリミットの設定。ネットがなかった時代、何が真実で何が嘘なのか。皆が知っている事実を嘘で塗り替える過程は茶番劇で、ある意味面白いが、金で幕を引かせる幹事長のモデルが田中角栄らしいのも著者のアイロニーなのかもしれない。2013/10/13
たぬ
16
☆4 1966年で5億円ということは今だといったいどれだけの額になるのだろう。くだらない欲のために莫大な血税を注ぎ込み、責任を追及されてものらりくらりと逃げるばかり。まったく庶民を馬鹿にしてる。人死にまで出ている本作に明確なモデルがあるとは思ってもみなかった。あのK島が半世紀以上前にこんな薄汚いカネをやり取りしていたなんて。今はさすがにここまで巨額な贈収賄はないと信じたい。2025/03/12
キムチ
12
フィクションとはいうものの、池田勇人氏の秘書自殺や、田中彰二代議士事件、九頭竜ダム疑惑事件などリアルかつ生々しい素材を取り扱っている。日本的汚職のモデルが脈々と続いてきて(今も)一朝一夕に改善が不可能なことがよく解る。そして政治家という人種が如何に生臭く、神経が磨滅しているかも。古い作品ながら、読み返すと戦後詩を読めて面白い。
紅花
9
今も昔も変わらない、政治の表と裏。なんとなく展開は読めている部分が多いんだけど、石川達三さんの淡々とでも力強い文章に、ぐっと物語に入り込めます。2021/02/16
おぎゃ
6
権力と金大好きなおじさんたちの話。好きなのはしゃしゃり出てきて名刺を置いていく総理の嫁…おや、どこかで聞いた話だな2017/09/03
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- 和書
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