出版社内容情報
大正期の詩歌壇には多数の俊英が現れた.白秋,光太郎,アララギ派の茂吉,ホトトギス派の俳人たち.演劇界では文芸協会・自由劇場の設立により新劇運動が始まった.巻末に全巻を通じた人名索引,事項・作品索引付載.全6冊完結.関川夏央解説
内容説明
大正期の詩歌壇には多数の俊英が現れた。白秋、光太郎、茂吉らの『アララギ』派。俳壇は『ホトトギス』が一大勢力を築く。演劇界では逍遙の文芸協会、小山内薫の自由劇場が設立され新劇運動の礎を築いた。本巻は「大正期の詩歌」「大正期の演劇」「大正期の思想と文学」、巻末に全巻を通じた「人名索引」「事項・作品索引」を付す。
目次
大正期の詩歌(中野重治;山本健吉;安東次男;勝本清一郎;猪野謙二)
大正期の演劇(千田是也;戸板康二;木下順二;勝本清一郎;猪野謙二)
大正期の思想と文学―阿部次郎・倉田百三・和辻哲郎など(柳田泉;瀬沼茂樹;勝本清一郎;猪野謙二)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
うえ
5
「大正期の思想と文学」が抜群に面白い。早稲田文学に対抗し三田文学に集った俊英たちは東北帝大設立により洋行を経て赴任していく。そのせいか、勝本は大正の思想と学問は豊熟せず終わったと述べ、瀬沼は昭和初期の「あらゆるものが見事に解決してしまう気がする」マルキシズムによって吸収されてしまったのだと言う。無論、その後の国家主義、そして戦後マルキシズムが来るわけで、短期間で思想文学等は目まぐるしく変化したことになる。解説の関川によると書評は二つしかなかったそう。何より本書原著が出たのが1965年。勝本は二年後に逝去。2020/11/05
壱萬参仟縁
3
虚無的な、頽廃的なデカダンス。労働者演劇は、吉野作造や長谷川如是閑の民主主義論で影響されていたようだ(160頁~)。瀬沼茂樹氏は、人間能力の自由な発揮を文化と呼んでおり、大正期では(199頁)市民文化はどうだったのか、関心をもった。A.セン的な内容であるため。勝本氏は、慶應で漱石門下から教えを得ている(200頁)。瀬沼氏が指摘する、志賀重昂『日本風景論』(217頁)。これは珍しく自分でも買って持っている。地元の小野の滝が出てくる。市民社会とは、市民のイデェが大事(229頁)。国家、民族はひとまず横に置く。2013/04/15