出版社内容情報
戦後日本の政治文化を底辺からささえた人びとの意識のありようを、「兵士たちの戦後」の中にさぐる。
内容説明
アジア・太平洋戦争を戦った兵士たちは敗戦後、市民として社会の中に戻っていった。戦友会に集う者、黙して往時を語らない者…戦場での不条理な経験は、彼らのその後の人生をどのように規定していったのか。「民主国家」「平和国家」日本の政治文化を底辺からささえた人びとの意識のありようを「兵士たちの戦後」の中にさぐる。
目次
序章 一つの時代の終わり
第1章 敗戦と占領
第2章 講和条約の発効
第3章 高度成長と戦争体験の風化
第4章 高揚の中の対立と分化(一九七〇年代‐一九八〇年代)
第5章 終焉の時代へ
終章 経験を引き受けるということ
著者等紹介
吉田裕[ヨシダユタカ]
1954年埼玉県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科特任教授。東京大空襲・戦災資料センター館長。日本近現代史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ステビア
19
戦士から企業戦士に、そして反省と証言へ2022/03/16
Satoshi
15
元兵士たちの戦後について、様々な証言とアンケート結果をもとに総括していく。非常に勉強になった。20年以上前に亡くなった祖父はインパール作戦の生存者であり、毎年開催される部隊の集会を楽しみにしていた。壮絶な経験をしたはずであるが、孫にはその苦労体験を話さなかった。本書を読めばその理由は理解できる。戦争体験といえども千差万別であり、立場により異なる。戦友を貶められないという気持ちを抱きつつ加害の記憶を持ち続けている。簡単に語れるものではない。2023/05/09
nnpusnsn1945
13
戦記本の種類や、連隊史について広く考察された本である。伊藤桂一や、神立尚紀の著作も言及があったが、後者は厳しい戦線の様相が描けていると高く評価されていた。また、軍人恩給の差、教科書問題にも兵士の視点からうまく切り込めていた。他にも、戦史叢書の問題点、靖国神社について兵士たちはどう思っているか等々幅広く出来事を取り上げている。本書は戦記本の紹介もされているので、気になった物を読めば理解が深まるであろう。2020/10/04
ののまる
12
これは本当に勉強になった。やっと元兵士が加害の体験を遺言として話そうとする機運になった現代、私たちがそれをどう受け止めて、非当事者であるが当事者意識を共有できるかにかかっている。戦友会が消滅していったことで緘口令がなくなり話しやすくなったことや、高度成長期によって次世代が戦中派世代に完全に背を向けて、あんたたちの起こした戦争でしょうよ、自分たちには関係ない、と戦争責任を追求をしなかった日本社会の戦後処理による歪みなど…、いろいろ納得。2021/07/18
エリ本
9
敗戦直後の復員船内での「上官へのリンチ」「戦争精神病患者の投身自殺」、戻ってからの民間人の白い目。部隊からの勝手な逃亡も相次ぎ、軍用機で家に帰っちゃう人もいたりとか、かなり混乱があったよう。壮絶な戦争から帰ってきた人の気持ちを考えると、戦後生き抜くのは相当大変だったんだろうな。少し理解できた。2023/10/31