出版社内容情報
現代イタリアの代表的知識人が、ネオナチの台頭、難民問題などアクチュアルな問題を取り上げながらファジーなファシズムの危険性を説いた発言集。知識人の責任やメディアの役割なども鋭く問い詰めた思想的問題提起の書。
内容説明
現代イタリアの代表的知識人による政治的・社会的発言集。湾岸戦争、ネオナチの台頭、難民問題など、執筆当時の時事的問題を取り上げながら、日常の中になにげない装いでしのびよるファシズムの危険性を説く。さらに知識人の責任、メディアの役割、信仰なき者にとっての道徳的確信の根拠など、現代の課題を鋭く問い詰める。EUの問題、トランプ米大統領の排外主義などが取り沙汰されている今、まさに読まれるべき思想的問題提起の書。
目次
戦争を考える
永遠のファシズム
新聞について
他人が登場するとき
移住、寛容そして堪えがたいもの
著者等紹介
エーコ,ウンベルト[エーコ,ウンベルト] [Eco,Umberto]
1932年北イタリア・アレッサンドリア生まれ。ボローニャ大学教授、同大高等人文学研究所所長を歴任。小説家としても活躍。2016年ミラノで逝去
和田忠彦[ワダタダヒコ]
1952年生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。東京外国語大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syaori
68
倫理的性格をもった文章を集めた本。『戦争について』『永遠のファシズム』では、決してなくなることはない戦争や「世界のいたるところで新たなかたちをとって現れてくる」ファシズムに対し、正当化できない、一つ一つ指弾すると明示し、『移住、寛容そして堪えがたいもの』では、戦争やファシズムの一因となる不寛容と寛容性の教育について語るというように、作者の知識人、道徳家としての側面が印象に残ります。戦争、不寛容、ナショナリズムなどの言葉が並びそうな今日の世界の中でどのような態度をとるべきかを含め、貴重な視点をもらえました。2022/10/04
ヘラジカ
40
大学や議会などで行った講演を文章に起こしたものと短い評論を集めた本。表題はファシズムの本質を学生に説いた簡潔なもの。最後の移民と不寛容についての文章が一番読む価値があると思う。移民が世界的に広まりつつあり欧州も人種の坩堝と化すことが避けえないとし、その流れのなかで不寛容をどう糾せば良いか。日本人は今のところあまり移民について関与していないが作中の「日本人は、塊として肉体的に移動しなくても、その商業的・経済的組織力によって存在を誇示している。」という文章が印象的だった。移民は物質的な問題だけではないなと。2018/08/22
hiroizm
30
読書会仲間と始めたポッドキャストのネタに、と表題のエッセイを再読。ファシズムを14の特徴に要約したものだが、その特徴いずれもプーチンに該当していてなんか笑ってしまった。反知性、非合理主義、不満を抱えた中間層から発生、のほか、弱者蔑視、女性蔑視、陰謀論好きもファシズムの特徴になっているのが今のご時世下とても心に沁みた。九条より軍備拡大を!専守防衛より攻撃力だーなどと勇ましい輩がいるようだが、そういう人物が一番信用ならないことが明快にわかる論考。これはもっと広く認知されるべき、と今だからこそ強く思った。2022/05/11
かもめ通信
25
ウンベルト・エーコの政治的・社会的発言集。湾岸戦争、ネオナチの台頭、難民問題など、執筆当時の時事問題を取り上げつつ、ファシズムの危険性を説き、メディアのかかえる問題を指摘し、知識人の有り様などを取り上げた、論文や講演録が5篇収録されている。手にとっては見たものの、数ページめくって、やっぱりエーコは小難しくて、とても読み切れそうにないとあきらめかけた。ところがふと思いついて声に出して読んでみると、これが意外といけてびっくり!?2022/04/23
hiroizm
17
本棚整理中に見つけて「永遠のファシズム」の章を再読。ファシズムを一つの堅牢なイデオロギーではなく、混合的な伝統主義、非合理主義、批判の拒絶、ナショナリズム、レイシズム、反平和、マチズモ(女性蔑視)などの14の特徴を組み合わせた症候群とする秀逸な論考。トランプ、安倍政権のもと新型コロナウィルス蔓延の今、これを読むのはホント染みる。ちなみに「敵の力を客観的に把握する能力が体質的に欠如」も特徴の一つ。なるほど、コロナ対策、もたもたしてるわけだ。日米二つの政権、ファシストの条件にマッチしてますよ。2020/04/17